アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:由利本荘市立西目小学校
教科等:3年理科(平成29年9月)
単元名:くらべよう!ゴールを目指して ~「風とゴムで動かそう」~

実証を通して、物を動かす働きの違いを比較して考察する力を育成したい

  • 振り返って次へつなげる
  • 互いの考えを比較する
  • 思考して問い続ける

実践の背景

  • 実践校は、学校教育目標を「ふるさとに学び、自分の生き方を真剣に考える子どもの育成」としてふるさと西目に学び、西目らしさの薫る体験的な学習活動や問題解決的な学習活動を重視し、研究主題は「学びの自立を目指して」としています。また、コミュニティ・スクールとして、地域とともに学校づくりを進めています。
  • 開発実践フィールド校として、全職員でアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善に取り組む過程を、県教育委員会・市教育委員会・県総合教育センターと連携し、推進地域に公開をしながら進めています。 
  • 子供自身が課題を発見し、解決し、発信していく単元構想の中で、どのように事象とかかわり、他者とかかわり、最終的に子供自身が自己の高まりとして手応えを得るのか、継続した見取りと教師の出番の在り方を問いながら、子供の学び続ける意欲が醸成されることを「学びの自立」と捉え研究を推進しています。

授業改善のアプローチ

3年生の理科の学習では、比較して考える学びを大切にして1年間の単元を相互につなげてきました。これまでの学習「くらべよう!植物の成長と体のつくり」や「くらべよう!昆虫の成長と体のつくり」では、観察を通して対象を比較しながら探究活動を行ってきました。本単元「くらべよう!ゴールを目指して~「風とゴムで動かそう」~」では、実証を通して現象の違いを比較して考察する力を育てたいと考え、単元を構築しました。本単元で育んだ実証を通して現象の違いを比較して考察する力を、次単元「くらべよう!明るさ・あたたかさ~「太陽の光を調べよう」~」の学習、対象や場面を変えても活用・発揮できる学びへとつなげていきます。また、教科領域等を横断したカリキュラムのデザインの一端として、児童の学んだことへの興味・関心の高まりや学んだことを活用・発揮する学びのつながりを大切にするため、学級活動「3松オリンピックを開こうパート2~ゴムで動くおもちゃで競争しよう~」を組み合わせた単元を構想しました。

単元づくりのポイント

目標

  • 風やゴムの力を働かせたときの現象に興味・関心をもち、進んで風やゴムの働きを調べようとしている。
    【自然事象への関心・意欲・態度】
  • 風を当てたときの物の動く様子や、ゴムを引っぱったときの物の動く様子を比較して、それらを考察し、自分の考えを表現することができる。
    【科学的な思考・表現】
  • 風を受けたときやゴムを働かせたときの現象の違いについて、手ごたえなどの体感を基にしながら調べ、その過程や結果を記録することができる。
    【観察・実験の技能】
  • 風やゴムには物を動かす働きがあることやその力は目的に合わせて調整できることを理解することができる。
    【自然事象についての知識・理解】

展開

1 くらべよう!風のはたらき(3時間)

風の力を体感し、生活の中から風の働きが物を動かすことに気付き、疑問を話し合い、興味を持つ。

車に当てる風の強さを変えて、車の動き方の違いを調べることを通して、風の働きに興味をもち、風の強さを変えた時の車の動き方の結果を分かりやすく整理する。

自分の狙ったところに車を止めるゲームを行い、実験結果の数値から風の強さを予想し、風の当て方を調節しながら車を走らせる。

2 くらべよう!ゴムのはたらき(4時間)

ゴムを伸ばしたり、ねじったりして、ゴムの力を体感する活動を通して、ゴムの働きに興味を持つ。また、体感したことを活用して、ゴムで動く車を製作する。

輪ゴムを伸ばす長さを変えて、車の動き方の違いを調べる活動を通して、ゴムの伸ばす長さによる物の動き方の違いを比較して自分の考えを表現する。

自分たちが考えたゴムの条件(本数・太さ)で、車の動き方の違いを調べる活動を通して、より遠くまで物を動かすことができるゴムの条件を考え、検証する。【本時6/9】

狙ったところに車を止めるゲームを行い、車の走る距離とゴムの伸ばし方を比較し、自分の考えを表現する。

3 利用しよう!風とゴムのはたらき(2時間)
⑧⑨

単元を通して学んだこと活用し、風やゴムの働きを利用したものづくりをする。

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

より遠くまで物を動かす条件を変えて実験し、その結果を比べて考察したことを説明することができる。

授業場面より

  • ①前時までの学習と比較して考察する

    前時までの学習と比較して考察する画像

    児童は、前時にゴムで動く車を輪ゴムを伸ばす長さを変えて、車の動き方に違いを調べ、まとめています。本時では「車がもっと遠くまで走るようにするには、どのようにしたらよいのだろうか。」という問いについて、ゴムの本数を変えることとゴムの太さを変えることで、車を遠くまで走らせることができるのではないかと予想を立てています。この予想は、前時までの学習の中でゴムをさわって体感したことが基となり、根拠として述べられていました。互いの考えの根拠について、教師の意図的指名を含めた聞き合う場を設定することで、ゴムのものを動かす働きついて、条件を絞って比較して考えていこうとする見通しにつながりました。

  • ②グループで実験をする

    グループで実験をする画像

    グループで実験を行う場面です。教師は、実験をする際の基準となる距離を明確にするため、輪ゴムを1本用い、伸ばした長さが10㎝の車の走行距離を確認したり、実験結果を整理・分類できる表やグラフを用いて思考の枠組みを提示したりしていました。このような支援が、児童が、実験を通して複数のデータを集積し、そのデータを比べることで、車が遠くまで走るために必要な条件について実験と話し合いを繰り返しながら思考し続ける姿、実験後に進んでグループ内で自分たちのデータを基に考察を始める姿につながっていきました。

  • ③実験結果を比較し、考察する

    実験結果を比較し、考察する画像

    グループで考えたことを全体で比較・検討する場面です。教師は、すべてのグループのデータが可視化され、共有できるように、各グループの実験の結果を児童がシールを貼って完成させていくグラフの枠組みを用意しました。また、車が遠くまで走った根拠について話し合うことができるように、実験結果を比べる視点を大切にして話合いをファシリテートしていました。このような教師の手立てに支えられ、児童は、自分のグループの実験の結果と他のグループの実験の結果を比べて考えることにより、車をもっと遠くまで走らせるためには、ゴムの本数を多くしたり、ゴムの太さを太くしたりするとよいのではないかと考察していました。

  • ④学びを振り返る

    学びを振り返る画像

    学びを振り返る場面です。児童の記述には、「自分のグループの実験結果と他のグループの実験結果を比べて考えることで、車をもっと遠くまで走るようにするためには、ゴムの本数を多くしたり、ゴムの太さを太くしたりすればいいことが分かりました。」や「実験が思うようにいかないときでも、他のグループの実験方法や実験結果と比べて考えることで、その原因に気付くことができました。比べて考えることは大事だなと思いました。」というものがありました。これらの記述から、児童が、複数の実験の方法や結果を比較して探究し、問い続けながら、問題解決していく大切さについて自覚してきていることが分かりました。

報告者:研修協力員  稲岡