アクティブ・ラーニング授業実践事例
学校名:安芸高田市立小田東小学校
教科等:3年総合的な学習の時間(平成29年6月)
単元名:地元産醤油の魅力、広報プロジェクト
対話を通してさまざまな伝え方のよさを比べ、地元の魅力を発信する力を育成したい
振り返って次へつなげる
互いの考えを比較する
新たなものを創り上げる
実践の背景
- 実践校は全校児童約80名の小学校です。
- 学校教育目標「ともに伸びる~自ら伸びる 友と伸びる 郷土と伸びる~」にせまり、夢や目標の実現に向けて仲間とともに学び合い、グローバル社会の中で主体的・創造的に活動する資質・能力の育成を目指しています。
- 課題設定を工夫するとともに自分の学びを広げたり深めたりする「学び合い」のある授業づくりに、同じ中学校区の小中学校で協働して取り組んでいます。
授業改善のアプローチ
- 地域探検の中で、地元の醤油店を訪問する、お店の人から話を聞く、利き醤油をするなどの体験活動をきっかけとすることで、地元の醤油店で見たり、聞いたり、味わったりした感動をみんなに伝え、よさを広めたいという意欲が高まるようにします。
- 地元の祭りにブースを出し、自分たちが感動したことなどを伝える場の設定を工夫することで、目的意識を持って学習に臨めるようにします。
- 本時は、児童が考えた地域のよさを広める伝え方に、よさを伝える観点として整理した『歴史』、『特徴』、『こだわり』の3つをハートのマークで関連付けて可視化することで、それぞれの伝え方のよさを比べ、効果的な伝え方を児童自らが整理できるようにします。
- マークがついていない伝え方に着目するように働きかけることで、対話によって、複数の伝え方を組み合わせて伝えるという新たな伝え方を見いだせるようにします。
単元づくりのポイント
目標
- 地域探検を通して、地域の歴史や自然などに触れ、人々と交流することで、地域の人々がつながり支え合っていることに気付き、自分たちの住む地域を誇りに思い、故郷を愛する心情を育てるとともに地域の一員として自分たちにできることを考え、地域のよさを発信しようとする。
- 地域の一員として地域のよさを発信していくことの学習を振り返ることで、自己の成長を自覚し、自己肯定感を育む。
展開
地元醤油店の魅力、広報プロジェクト(全25時間扱い中第12時)
- 1
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地元の魅力や自慢を発見する。(1時間)
- 2
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地域のはてなについて、見たり、質問したりしたいことを整理する。(2時間)
- 3
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地域を探検し、見たり、質問したりして魅力を集める。(3時間)
- 4
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地域探検をして、分かったことや広めたいことを整理する。(4時間)
- 5
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地元産醤油の魅力を広めるために、自分たちにできる伝え方を考える。(2時間)(本時)
- 6
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地元産醤油の魅力を広める伝え方を工夫する。(4時間)
- 7
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広める活動の準備をし、実行する。(8時間)
- 8
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単元を振り返り、自分の成長を自覚する。(1時間)
「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善
本時のねらい
- 地域の宝の一つである地元産醤油の魅力をよりよく広めるための伝え方を考えることができる。
授業場面より
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①地元産醤油の魅力の伝え方を整理する
「私たちは、ポスターに『地元の醤油店の歴史』、『商品の特徴』、『お店の人の商品に対するこだわり』を書いたら魅力が伝わると思う」、この『歴史』、『特徴』、『こだわり』の3つの観点は、地域探検で醤油店を訪問し、体験したことを整理する中で、児童が見いだしたものです。
この3つの観点を教師はハートのマークで表して可視化していきます。
このことによって、前時に児童が考えた「ポスター」や「ちらし」、「キャラクター」、「味見」などの伝え方のよさが比べやすくなり、効果的な伝え方を児童自らが整理していくという見通しを持ちます。 -
②複数の伝え方のよさを比べて考える
「マークが2つしかついていない伝え方が多いよ」、「キャラクターはマークがひとつもついていないよ」、可視化されたマークを見ながら、児童が気付きを述べ、魅力を効果的に伝えるためにマークが増やせないかと考えていきます。
ある児童は、「ちらしで『特徴』と『こだわり』の2つを伝えると言っていたけど、ポスターと同じように『歴史』も書いて伝えられると思う」と発言します。本時のめあてである「よりよく広める方法」を考え始めている児童の姿です。
多様に見いだした伝え方を関連付けて考えることで児童の考えが広がっていきます。 -
③いくつかの伝え方を組み合わせる
「キャラクターにはマークがついていないけど、どうやったらキャラクターを生かせそうかな」と、新たな伝え方を児童自らが見いだせるように、教師が児童に問いかけます。
それぞれの児童が考えていたことを説明し始めます。「ポスターにキャラクターの絵をかいたらいいと思う」、「組み合わせるともっと魅力が伝わりそうだ」、「ちらしにキャラクターの絵をかいて配りながら、味見をしてもらったら魅力がすごく伝わると思う」などと、最初は一つの方法で魅力を伝えようと考えていた児童が、対話によって、複数の伝え方を組み合わせて伝えるという新たな伝え方を見いだしていきます。 -
④振り返って次につなげる
「最初、ちらしでは『特徴』と『こだわり』しか伝えられないと思っていたけど、みんなと話すと『歴史』も『キャラクター』もかけることがわかった。たくさんのことが伝えられるようになってうれしかった」などと、児童は振り返りました。
毎時間、何をどのように学び、感じ、考えたことを振り返ることで、対話によって考えが広がるなどの学んだ手応えを自覚し、次の学びへの意欲を高めています。それぞれの伝え方の持つよさを考えながら、借り物ではない自分たちが考えた伝え方を見いだし、新たなものを創り上げようとしている児童の姿が見られました。
報告者:研修協力員 木野村