アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:岡山県立岡山芳泉高等学校
教科等:1年物理基礎(平成29年6月)
単元名:等加速度直線運動

物理法則の公式の理解を深めるために、図やグラフでも考えたい

  • 粘り強く取り組む
  • 思考を表現に置き換える
  • 知識・技能を活用する

実践の背景

  • 全日制普通科高等学校で、320人の募集定員です。
  • 生徒のほぼ全員が4年制大学への進学を目指しています。
  • 「Hosen21世紀プロジェクト」として、「学力向上事業推進委員会」「グローバル人材育成推進委員会」「高大接続推進委員会」「学校改革推進委員会」の4つの委員会を設け、主幹教諭、指導教諭をリーダーとして日々変革に取り組んでいます。
  • 隣接して公立の小学校や中学校があり、授業参観等の交流が比較的しやすい環境にあり、相互に交流を実施しています。

授業改善のアプローチ

  • 物理は、公式を暗記し、公式を適用して問題を解くという意識を持った生徒が一定数います。しかし、大切なことは、現象を見つめることであり、公式はその結果、導き出されたものであるということを物理基礎を学習する段階でしっかりと押さえたいと考えました。
  • 実験等から導き出された複数の公式の中で、どの公式を使えばいいのかだけではなく、現象を図やグラフに表して考えることを通して、公式を使わずに考えることができることに気付き、多様な方法で考えることができる生徒の育成を目指したいと思っています。
  • 日常生活の中には、理科で学習する内容に関連した事象があふれています。このことを生徒が意識することにより、授業での学習内容に対しても、より意欲的に取り組むことができるのではないかと考え、授業の冒頭は、生徒が興味・関心を持った新聞記事を発表する場を設けたり、授業の中で、日常生活と関連のある問いを作ったりしています。
  • 発表する機会をできるだけ多く設け、生徒自身が自分の考えを伝える力や表現する力の伸長を目指したいと考えています。

単元づくりのポイント

目標

  • 物体が直線上を運動する場合の加速度について関心を持ち、意欲的に探究しようとする。
    【関心・意欲・態度】
  • 物体が直線上を運動する場合の加速度について考察し、考えを表現している。
    【思考・判断・表現】
  • 物体が直線上を運動する場合の加速度について観察、実験などを行い、基本操作を習得するとともに、それらの過程や結果を適切に記録、整理している。
    【観察・実験の技能】
  • 物体が直線上を運動する場合の加速度について理解し、知識を身に付けている。
    【知識・理解】

展開

加速度(全5時間)

1

 斜面を降下する台車の実験(実験)

2

加速度の定義を理解する

3

等加速度直線運動の3つの公式を導出する

4

等加速度直線運動を図やグラフで考える(本時)

5

公式の扱いに習熟し、等加速度直線運動について理解を深める

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

  • 等加速度直線運動について、図やグラフを用いて考察し、考えを表現する。
    【思考・判断・表現】

授業場面より

  • ①理科の最新情報の交換

    理科の最新情報の交換画像

    身近な科学について考える場面です。毎時間冒頭の5分程度を使い、順に指名された生徒が最近の自然科学や科学技術に関する新聞記事から話題を提供し、それについて全体で考えます。
      本時は、新幹線の地震対策に関する様々な技術の紹介の記事をもとに考えました。「自然災害はいつ起こるか分かりません。災害が起こった時に、どれだけ被害を少なくするか、防災や減災という考え方から、様々な技術が研究され、実用化されてきました。これらの技術により助かる命が増えることは素晴らしいことだと思います。」とまとめていました。
      このように、身近な話題の中から理科に関する話題を生徒自身が探し発表することで、理科の有用性をより意識し、授業での学びもより必然性のある主体的なものへと変化していきます。

  • ②前時までの内容の復習

    前時までの内容の復習画像

    前時までの学習内容を振り返る場面です。
      はじめに、前時までに導き出された公式を確認します。その後、これらの公式を使ってどういったことが問えるのか、何が分かるのかについて確認するため、生徒自らが問題を考え、ペアでお互いに解くように伝えます。生徒は、「初速度〇m/s、加速度〇m/s²で等加速度直線運動をする物体の速度が〇m/sになるまでに物体は何m進んでいますか?」などの問題を考えたり、公式を活用して問題の答えを考えたりしました。
      単に、問題集などで問いの解答を考えるだけでなく、各自で問いを作ることにより、導いた公式をより深く理解し、活用できるものへと誘っています。

  • ③現象をグラフや数直線で捉える

    現象をグラフや数直線で捉える画像

    本時の課題について考える場面です。
      本時の問いは、「原点を初速度0で一定の加速度でまっすぐに進んだ物体の〇秒後の位置はどこにあるか?」「○秒後の物体の速度はどのように表されるか?」の2つです。順に出されるこれらの問いに対して、数直線上に図示しながら考えていきます。この時、前時までに導き出された複数の公式の中で、どの公式を活用すればいいのか、公式の中にはどのような情報があるのかについて考えながら進めていきます。等加速度直線運動の様子を図を用いて表現することによって公式の理解がより深いものになりました。
      その後、教師は生徒を指名し、前で板書をしながら発表するように促します。これは、全体の前で発表をする機会を持つことで、人に伝える力、表現力の育成を目指すという意図からです。指名された生徒は、身振りを交えながら、板書を活用して発表していました。

  • ④日常生活に適用する

    日常生活に適用する画像

    理科の学習が日常生活と関連するということを実感する場面です。電車の運動を本日の学習内容と「つなげ」ました。
      まず電車の運動をv-t図(速度と時間の関係のグラフ)に表します。このグラフを活用することにより分かることを考えます。さらに発展学習としてこの運動をx-t図(変位と時間の関係のグラフ)に表すという課題にも取り組みます。ここまでにグラフで捉えて考える学習を積んできた生徒はどの生徒もグラフをかき求めることができました。
      授業後生徒は、「このような日常生活への適用により『物理の授業が現実の世界と関係が深い』ということを実感するようになった。」と話していました。生徒自身が授業と日常生活を「つなげて」考えるようになったといえます。これらの学習活動を通して、さらなる公式の理解にもつながりました。

  • ⑤学びを振り返る

    学びを振り返る画像

    授業の最後には、振り返りシートを用いて本時の学びを整理していました。「本日の授業で一番大切なこと」「本日の授業でわからなかったこと」「疑問に思ったこと」「もっと知りたいと思ったこと」を視点としてシートに記入していきます。
      この振り返りシートは、生徒にとっては、授業を振り返ることで、学びを整理し今後の学習へとつなげるためのものです。一方、授業者にとっては、ここに書かれた「分からないこと」「疑問」「知りたいこと」が、今後の授業展開の中で生徒の理解を把握したり、今後の授業展開を考えるなどの授業改善の手がかりとなります。

報告者:研修協力員  山田