アクティブ・ラーニング授業実践事例
学校名:鹿児島市立伊敷中学校
教科等:2年数学科(平成29年5月)
単元名:連立方程式
等式の性質に従って解法の根拠を説明する力を育成したい
振り返って次へつなげる
協働して課題解決する
思考して問い続ける
実践の背景
- 実践校は長年、鹿児島大学教育学部の附属学校として、時代の要請に応じた研究・実践に取り組み、毎年その成果を県内外の先生方に公開しています。
- 本実践が行われた年度は「新しい時代を切り拓く資質・能力を身に付けた生徒の育成」を主題に掲げて研究・実践を行いました。教科横断的に育成を図る「汎用的な資質・能力(課題発見力・情報活用力・論理的思考力・協働する力・メタ認知)」と、各教科で育成を図る「各教科で育成すべき資質・能力」を整理することで研究の方向性を定め、アクティブ・ラーニングの視点から授業改善を行っています。
授業改善のアプローチ
- 生徒が自分自身の学びを振り返るために、「学習内容の振り返り」と「自己の変容に対する振り返り」の2つの場面を設定しました。「学習内容の振り返り」では、何が理解できたかをまとめる「本時のまとめ」を生徒が個人で行う活動になります。文章に限らず、図や表・式・グラフ等を駆使しながら自分でまとめる活動を通して、生徒が本時の学習内容を考え直すと考えました。また、「自己の変容に対する振り返り」では、見通しと「本時のまとめ」を比較し、なぜできるようになったのかを文章でまとめることにしました。授業を通して感じていた自己の高まりを文字言語でまとめることではっきりと自覚するようになり、生徒自身の「手応え」となった感覚は、主体的に学ぶ態度につながると考えたからです。
- 協働学習の場面で生徒の思考が広がりや深まりを見せるためには、お互いが同じ視点に立ち考えや疑問を伝え合う双方向性のコミュニケーションが有益であると考えました。そこで、ホワイトボードやマグネット、その他様々な教具を積極的に活用し、生徒の思考を可視化するように努めました。可視化されることでお互いの考えの共通点や相違点が明確になり、お互いの説明が分かりやすくなると考えました。分かりやすくなることで、新たな気付きや疑問が生まれ、対話の必然性が生まれると考えました。また、ホワイトボード等に図をかき加えたりマグネットを移動させながら情報を操作したりすることは、説明することの手助けとなり、結果として双方向性のコミュニケーションが生まれやすくなると考えました。
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授業を設計する段階で、特に生徒の思考の変化が現れやすい以下の3つ場面を、具体的な生徒の姿で想定することにしました。事前に生徒の思考を予想することで、生徒主体の授業が実現できると考えたからです。さらに、予想と実際の生徒の姿を比較することで、授業改善のヒントになると考えました。
①生徒が課題に対する解法に気付いた場面
②論理的な説明ができたり、友人の説明を聞いて納得できたりした場面
③解法を他の問題に適用を試みたり、新たな疑問を抱いたりした場面
単元づくりのポイント
目標
- 連立2元1次方程式を使うよさを知り、進んで活用しようとする。
【関心・意欲・態度】 - 連立2元1次方程式を具体的な場面で活用することができる。
【見方や考え方】 - 簡単な連立2元1次方程式を解くことができる。
【技能】 - 連立2元1次方程式の必要性と意味及びその解の意味を理解することができる。
【知識・理解】
展開
連立方程式(全15時間)
- 1 単元の導入(1時間)
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- 具体的な事象から、2元1次方程式をつくる。
- 2 連立方程式とその解(1時間)
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- 2元1次方程式とその解の意味を理解する。
- 連立方程式とその解の意味を理解する。
- 3 連立方程式の解き方(6時間)(本時1/6)
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- 具体物を用いて、連立2元1次方程式の解き方を考える。
- 加減法を用いて、連立2元1次方程式を解く。
- 代入法を用いて連立2元1次方程式を解く。
- かっこや小数・分数係数を含んだ連立方程式やA=B=Cの形の連立2元1次方程式を解く。
- 4 連立方程式の利用(5時間)
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- 具体的な事象についての問題を、連立2元1次方程式を利用して解決する。
- 連立2元1次方程式の解とグラフの関係について、グラフをかいたり読み取ったりすることができる。
- 5 単元のまとめ(2時間)
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- 連立2元1次方程式について、これまで学習したことを活用して、問題を解決することができる。
「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善
本時のねらい
等式の性質を基に、2つの2元1次方程式から1元1次方程式を導くという、連立方程式の解き方を説明することができる。
授業場面より
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①あれ?表で求められないぞ?
もうすぐ母の日。母の日に贈るのは赤のカーネーション。では父の日は?実は黄色のバラだそうです。教師は各1本分の値段を求める問題を提示しました。前時に同じような問題を表で考えた生徒は、表を使って解き始めます。しかしどうしても解けずに戸惑う生徒たち・・・。解けない理由は扱う数の大きさにあると気付きました。そこで教師は「どうですか?」と問いかけます。課題意識を刺激された生徒は「数が大きくて計算が大変。もっと簡単に解きたい!」と答えます。本時の学習課題「よりよい方法で連立方程式を解くにはどうすれば良いか」の完成です。
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②よし!図を使って考えてみよう!
生徒はそれぞれの考えを持ち寄ってグループで解決を図ります。写真は図で解決しようとしたグループです。生徒は教師が用意した赤色と黄色のマグネットを使い説明を始めました。具体物を使うことで、お互いの説明が可視化され、操作できることで課題解決に向かいます。言葉だけの説明より分かりやすく、説明もしやすいからです。生徒は上の図と下の図の差である280円が黄色のカーネーション2本分の値段であることなどに気付きました。
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③式で解くと分かりやすそう!
グループで話し合った後、全体で解法を比較します。生徒は電子黒板に話し合った内容を表示しながら説明します。教師は図で考えたグループと式で考えたグループをそれぞれ1つずつ提示しました。生徒は2つの解法を比較し「上の式から下の式を引く」という共通点を見いだしました。さらに、図で考えた生徒は式で考えたグループの考えを聞き「式をよんでいて分かりやすい」という意見を述べました。文字式を用いて形式的に処理できる数学の良さに気付きました。
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④式で解けるようになりたいな。
最後に「自己の変容に対する振り返り」を行いました。自分自身が何ができるようになったか、今後どのような場面で生かしていきたいか振り返ります。「今日は図で考えたが、連立方程式の解法の意味が分かった。また、式で解いている班の発表を聞いて、式で解いた方がシンプルで分かりやすいと思った。次回は式でも解けるようになりたい」というような次の授業への意欲を高まらせる生徒の姿が見られました。このような活動から次の学びにつながる主体性が少しずつ育成されています。
報告者:研修協力員 宮迫