アクティブ・ラーニング授業実践事例
学校名:川崎市立川崎小学校
教科等:3年算数科(平成29年7月)
単元名:わり算・あまりのあるわり算
一つの教科にとどまらない汎用的な能力の育成を目指して
自分と結び付ける
協働して課題解決する
知識や技能を概念化する
実践の背景
- 学校として共通性と一貫性のある取り組みをして、思考力等の汎用的な能力の育成を積み重ね、主体的・対話的で深い学びの実現の基盤づくりをしています。その基盤となる「教師の秘伝」を活用して、学校教育全体を通した汎用的な資質・能力の育成に取り組んでいます。
- 各教科の単元配列を「資質・能力の関連」と「学習内容の関連」の視点から横並びで比較し、分散して配列したり、同時期に集中して配列したり、連続して配列したりなど、学んだことがどこでどう使えるかを探りつつ、ブラッシュアップを図っています。
- 「会議は精選し短時間で」「指導案は単元計画を重視」「新たに何かを入れる時は何かを止める」などの業務の効率化を図りつつ、教師が児童と向き合う時間を確保し、授業が充実するように取り組んでいます。
授業改善のアプローチ
- 単元や題材など時間や内容のまとまりを見通した主体的・対話的で深い学びを実現するために、以下のような点に留意しながら単元づくりをしています。
- 単元全体を児童の実生活や実社会とのつながりを意識した学習過程の展開とし、「①習得(主として教員が教える場面)」~「②活用(主として児童が考える場面)」~「③構成(主として児童が考える場面)」をどのように組み立てるかを構想しています。
- 本事例の単元では「日常生活や社会の事象を数理的に捉え、数学的に表現・処理し、問題を解決し、解決過程を振り返り得られた結果の意味を考察する」という問題解決の過程と、「数学の事象について統合的・発展的に捉えて新たな問題を設定し、数学的に処理し、問題を解決し、解決過程を振り返って概念を形成したり体系化したりする」という問題解決の過程の二つのサイクルが相互に関わり合って展開するような単元デザインを試みました。
単元づくりのポイント
目標
- 知識・技能
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- 除法の意味について理解し、それが用いられる場合について知る。また、余りについて知る。
- 除法が用いられる場面を式に表したり式を読み取ったりする。
- 除法と乗法や減法との関係について理解する。
- 除数と商がともに1位数である除法の計算が確実にできる。
- 簡単な場合について、除数が1位数で商が2位数の除法の計算の仕方を知る。
- 思考力・判断力・表現力等
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- 数量関係に着目し、計算の意味や計算の仕方を考えたり計算に関して成り立つ性質を見いだしたりするとともに、その性質を利用して計算を工夫したり計算のたしかめをしたりする。
- 数量の関係に着目し、計算を日常生活に生かす。
- 学びに向かう力・人間性等
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- 数量に進んで関わり、数学的に表現・処理したことを振り返り、数理的な処理のよさに気付き、生活や学習に活用する。
展開
(本時は全19時間扱い中第18時、以下は主な学習問題)
- 1~11
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わり算
- 12
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習字の半紙をグループに18枚配る。1人4枚ずつ取る。何人に分けられるか。(習得)
- 13
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あめ玉が13個ある。1袋に4個ずつ入れると、何袋できて何個余るか。(活用)
- 14
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花の種が13個ある。3人で同数ずつ分けると、1人分は何個になって何個余るか。(習得)
- 15
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茶豆が16個ある。3人で同数ずつ分けると、1人分は何個になって何個余るか。(習得)
- 16
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- ①3-3には37人いる。先生は習字道具をロッカーに片付けたい。1つのロッカーには4つ入る。ロッカーはいくつ必要か。
- ②3-3に新しい本棚が届いた。本棚の幅は23㎝。先生は厚さ3㎝の本を入れたい。本は何冊入るか。(習得)
- 17~18
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わり算は、生活のどんな場面で使われるのだろう。(構成)【本時】
- 19
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学習の振り返りをしよう。(活用)
「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善
本時のねらい
数学的に表現・処理したことを振り返り、数理的な処理のよさに気付き、生活や学習に活用しようとしている。
授業場面より
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①わり算を使う場面はいろいろあるね!
初めの発問は全員挙手です。手の挙がらない児童が数名いましたが、友達が集まって相談に乗り始めました。みんなでよくなろうとする意識の表れです。意見交換が始まると、いろいろな「わり算が使われる場面」が交わされ、「まかない」の意味を尋ねるなど、具体的な場面を思い浮かべながら互いの意見を聞き始めました。
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②本当にわり算を使っているのかな?
「D.家族でいちごを分ける時に1人分はいくつかを考える場面」「E.4人家族で20個のアメを分ける場面」「F.45分の授業をじっくりタイムなどの3つに分ける場面」など、友達の意見につなげながら多様な意見が出されました。教師は、児童がさらに現実的に考えられるようにHのように問いかけ、相談し合うように促しました。
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③便利に使える場面があるんだなあ
「本当にわり算を使っているのか」。グループで情報交換をした後、再びみんなで考え始めました。すると、「I.大きな数をわり算で処理する場合」「I.わり算だから早く処理できる場合」「K.わり算の考え方を使って処理する場合」など、数理的な処理のよさに気付き、生活の具体的な場面で活用しようと考えることができました。
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④同じ宿題なのにパターンが違うんだ!
本時をまとめる場面です。教師は把握しておいたLとMの例を紹介し、児童が「包含除と等分除」という二つの概念を比較できるようにしました。児童は「同じ宿題なのにパターンが違う」と驚き、二つの概念の違いを自覚しました。児童は教師とともに多様な意見を分類し、日常生活とつなげて考えることができました。
報告者:研修協力員 谷内