アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:横浜市立大岡小学校
教科等:6年総合的な学習の時間(平成29年6月)
単元名:段ボールで 楽しい製作所
           ~段ボールのことをもっと知りたい!~

段ボールを通して地域の人々とつながる学びを生み出したい

  • 振り返って次へつなげる
  • 互いの考えを比較する
  • 自分の思いや考えと結び付ける

実践の背景

  • 学校教育目標「ともに学びをきりひらいていく児童」の具現を目指し、「自ら学びを創り、生き方を豊かにする子どもの育成」を研究主題に置いています。総合的な学習の時間では「探究的な学習を通して、『ひと』『もの』『こと』に粘り強くかかわりながら、主体的、創造的、協同的に問題を解決し、自ら学びを創り、自分の生き方を考える子ども」の育成を目指しています。
  • 三つの「目指す子ども像」に迫るため、「単元で育てたい資質・能力」を設定しています。
    「求め続ける子ども」:対象に心を寄せる・目標や願いを高める・自分の学びや成長を捉える
    「創り上げる子ども」:目標や願いの実現を構想する・問題に気付き、見通しをもつ・多様な情報を整理して捉える
    「共に生きる子ども」:人や社会とつながる・他者と向き合い協働する

授業改善のアプローチ

  • 本校では毎年、学級ごとに単元開発を行っています。その拠りどころとなるのは、本校が定めた「地域・環境・福祉・生活・生命・文化」から成る「単元づくりの内容的価値」です。これを拠りどころとしながら、目の前の子どもたちの思いと教師の願いをすり合わせて、単元を生み出しています。
  • 本校では、単元を生み出す苦労を全教員が共有しています。4月末の校内研修では、各自が持ち寄った単元構想をグループごとに協議します。苦労して生み出した材について、すべての教員が対等の立場で批正し合う姿は、「自ら学びを創り、生き方を豊かにする子どもの育成」を願う姿そのものです。
  • このようにして生み出された単元は「年間指導計画」として具体化されます。4月の第1版作成後も、子どもの実態や学びの状況によって随時更新されており、現実的に活用できるものです。そのため、総合的な学習の時間と各教科等との関連を考える上でも有効な資料となっています。

単元づくりのポイント

目標

  • 小単元「段ボールのことをもっと知りたい!(15時間扱い)」の目標

  「段ボールを用いて楽しいことをしたい」という思いを実現するために、調べたり実験したりすることを通して、これからの活動の基となる必要な知識や情報を集めて整理したり、段ボールでできることの可能性の広がりを感じたりして、今後の、まちとつながる取組への見通しを持つ。

【対象についての知識】

  • 段ボールのリサイクル率や多彩な機能を知り、自分たちのまちでも生かされていることにつなげる。
  • 段ボールの強度を上げるためにできる加工の仕方を理解する。

【思考力・判断力・表現力】

  • 思いの実現に向けた必要な取組について、情報や事実を整理して捉え、次の活動へ生かす。
  • 疑問を解決するための方法を考えて行動し、それらを情報や根拠として用いて考える。

【学びに向かう力・人間性等】

  • 1年間の活動に意欲を持ち、思いの実現に向けて行動し続けようとする。
  • まちを「段ボール」という視点で見つめ直し、目的に向かってすすんで関わろうとする。

展開

1

「『大岡の時間』で目指すものを考えよう」

2

「段ボールのことをもっと知りたい!」【本時】

3

「『遊べて楽しい』を作りたい!」

4

「『役立って楽しい』を作りたい!」

5

「『楽しい』を届けたい!」

6

「取組と学びを振り返ろう」

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

まちで手に入れた段ボールについて、自分で調べたことをもとに友達と情報を伝え合ったり、調べたことから考えたことを伝え合ったりすることを通して、場所や使われ方、状態、量等、様々な視点で捉え、その様子を調べたり、違いを理解したりして、自分たちの今後の活動への思いを持つ。(多様な情報を整理し捉える)

授業場面より

  • ①バナナを入れるから「複両面」なんだ!

    バナナを入れるから「複両面」なんだ!画像

    「まちにはどんな段ボールがあるのか?」本時は、いろいろな店で集めた段ボールの特徴を報告する場面から始まりました。「これはバナナを入れるから『複両面』でメッチャ硬い!」教師は、聞いている児童に「どのくらい硬いか伝わってる?」と問いかけ、実際に触るよう促しました。児童は歓声を上げて『複両面』の硬さを触って確かめるとともに、「壊れやすいものを入れる段ボールは『複両面』が使用される」という内容物と構造について考え始めました。

  • ②いろんな面から段ボールがわかってきた!

    いろんな面から段ボールがわかってきた!画像

    教室には前時までの学習の成果が模造紙などにまとめられています。児童はそれらを活用しながら、段ボールの大きさ、厚さ、構造、強度、硬さ、量などの様々な視点で語ります。新しい情報を伝える児童は段ボールの構造を説明した本を見せたり、「かにかにロック」の構造を実際に組み合わせて説明したりしました。教師はそれらの発言内容を板書で構造化したり、語り切れない部分を補ったりと、児童が主体的に話し合えるように支援しました。

  • ③そんなに丈夫なら、いろいろ作れそう!

    そんなに丈夫なら、いろいろ作れそう!画像

    自転車屋さんからもらってきた大きな段ボールが紹介された場面です。それまで、構造や強度の特徴が話し合われていたのですが、ある児童が「これは座れるくらい丈夫なんです!」とアピールしました。段ボールにピョンと飛び乗って座ろうとする友達の姿に、雰囲気が変わりました。「乗れた!」「ホントだ!」自慢げに座っている友達を見る児童も嬉しそうです。「これだけ丈夫な段ボールを使えば、いろいろなものが作れそうだ」という意識に変わっていきました。

  • ④次から「作る」に向かっていこう!

    次から「作る」に向かっていこう!画像

    本時を振り返る場面です。それまで熱を帯びていた教室がシーンとなり、児童の鉛筆の音だけが響きます。ある児童は「『両面』が一般的なので『両面』ぐらいしかないのかなあと思っていたけど、『複両面』があって安心しました。なぜなら、家具を作る場合と小物を作る場合とでは、段ボールの硬さが違うと思うからです」と振り返りました。段ボールに関する多様な情報を「構造面」で整理し、「自分が作りたいもの」に重ねて捉える学びが実現されていました。

報告者:研修協力員  谷内