アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:安曇野市立三郷小学校
教科等:2年算数科(平成29年6月)
単元名:たし算とひき算のひっ算

「自ら考え行動する子ども」の学びを実現したい

  • 自分と結び付ける
  • 多様な情報を収集する
  • 思考して問い続ける

実践の背景

  • 学校教育目標「自ら学ぶ子ども 心豊かな子ども 明るくたくましい子ども」を掲げる1000人規模の小学校です。「三郷の里で、友と学び合いながら、自ら考え、行動する三郷っ子」の実現を目指して、「主体的・対話的で深い学びのある授業」「つながりを深め、自尊感情を高める活動の実践」「健やかな心と体づくり」を推進しています。
  • 従来、前年度に決めていた研究テーマを本年度は「新年度の教職員」で練り上げることにしました。そこで、研究主任の授業を全教員で参観し、学級の児童の姿と重ねて「目指す授業イメージ」を協議する「研究はじめの会」を設けました。このように新しい取組に挑戦しながら、各教員が考える「自ら考え行動する子ども(研究テーマ案)」とはどのような学びの姿なのかを考え合うことが始まっています。本事例で紹介する授業者も同じように考え、日々の授業改善を重ねながら「自ら考え行動する子ども」の学びを模索しています。

授業改善のアプローチ

「縦に位を揃え、同じ位の数を足すという、筆算の仕組みを理解する」というねらいを明確にしました。このねらいを達成するため、学習内容への興味・関心が湧く提示方法を構想しました。そこで、児童会で収集中だったエコキャップを利用することで、児童が問題場面を理解して本時学習する内容を見いだしやすくなるようにしました。さらに学習課題を設定する場面では、「数図ブロックや数え棒を使って考えればよさそうだ」という既習経験を生かした追究方法を児童が考えられるような学習活動を生成しました。このように「教師の願い」だけで学習活動を配列するのではなく、「児童の興味・関心」をとらえて、より最適な学習活動を生成する視点は、単元を通した「主体的・対話的で深い学び」の実現につながります。

単元づくりのポイント

目標

  • 2位数の加法計算について、筆算形式のよさに気付き、生活や学習に活用しようとする。
    【算数への関心・意欲・態度】
  • 2位数の加法の筆算の仕方を、図や式などを用いて考え、表現することができる。
    【数学的な考え方】
  • 2位数の加法計算について、筆算の手順を基に、確実に計算することができる。
    【数量や図形についての技能】
  • 2位数の加法計算が1位数などの基本的な計算を基にしてできることを知り、その筆算の仕方について理解する。
    【数量や図形についての知識・理解】

展開

1

34+12の計算の仕方を考える。【本時】

・数図ブロックや数え棒を使って考える。

2

30+24、32+4の筆算の仕方を考える。

・2位数+1,2位数=2位数(繰り上がりなし、空位、欠位あり)

3

37+28の筆算の仕方を考える。

・2位数+2位数=2位数(繰り上がりあり)

4

28+32、28+6の筆算の仕方を考える。

・2位数+1,2位数=2位数(繰り上がりあり、答えが一の位に空位あり、欠位あり)

5

問題づくりに取り組む。

・2位数+1,2位数=2位数(繰り上がりあり)

6

17+24=41と24+17=41の二つの式を比べる。

・問題場面から数量の関係をとらえ、テープ図を完成させ立式する。

7

単元の学習内容を適用して問題を解く。

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

(2位数)+(2位数)のエコキャップの合計を求める場面で、今までの計算経験で具体物を手立てに考えた経験を想起することを通して、縦に位を揃えて同じ位の数を足すという筆算の仕組みを理解することができる。

授業場面より

  • ①ブロックや数え棒で考えてみたい!

    ブロックや数え棒で考えてみたい!画像

    身近な具体物を使って問題場面を理解する段階です。教師は児童会が現在収集を呼び掛けているエコキャップを使い、児童の興味を高めることにしました。2種類の袋に入ったエコキャップを見せて「合わせた数をどうやって求めればいいかな」と尋ねると、児童は「たし算でできそう」「式は34+12だ」と問題からわかることを伝え、「ブロックや数え棒を使って、考えたい」という求め方が提案されました。児童は解決のための具体的な見通しをもつことができました。

  • ②10の束とバラを分けるといいのかな?

    10の束とバラを分けるといいのかな?画像

    個人追究の場面です。児童は数図ブロックだと数が足りないことに気付き、数え棒の10の束とバラを机の上に並べて考え始めました。隣の友達と見比べながら互いの意見を交流し合ううちに、「10の束3つ」と「10の束1つ」、「バラを4つ」と「バラを2つ」を分けて並べる方が考えやすいことに気が付く児童が増えてきました。対話によって考え方を比べ、解決方法を見いだす姿です。教師はこれらの姿を捉えて「なぜそう考えたの?」と尋ねることで、筆算につながる数え棒の並べ方のよさを褒めて価値付けました。

  • ③たてに揃えなきゃおかしいよ!

    たてに揃えなきゃおかしいよ!画像

    全体追究の場面です。「10の束とバラをそれぞれ縦に並べると見やすいんだな」という考え方を共有したところで、教師は「9マス(縦3×横3)のプリント」を配布し、筆算の形で書くように促しました。このプリントを使って自分の考えを書いた児童に向けて、教師は「正しい筆算」と「位を揃えずに書いた筆算」を提示しました。「おかしいよ!」と訴える児童に、「どうしてかな?」と尋ねることで、児童自身が十の位と一の位を揃えて計算することの意味や価値に気付けるようにしました。

  • ④これを「ひっさん」っていうんだ!

    これを「ひっさん」っていうんだ!画像

    授業のまとめの場面です。本時の学習問題から導き出された考え方を「①同じ位がたてにそろっている ②たてにたす」とまとめたところで、教師は「今日皆さんがたどり着いたこの計算、名前があります。これは『ひっさん』と言います」と伝えました。新しい言葉に出合った児童は「先生、それが今日のまとめだね」「先生、振り返りを書こうよ」と1時間で学んできた成果をノートに書きまとめました。この場面でも、全校研究テーマ「自ら考え行動する子ども」の姿が表出されていました。

報告者:研修協力員  谷内