アクティブ・ラーニング授業実践事例
学校名:徳島県立城ノ内中学校・高等学校
教科等:4年国語科(平成29年6月)
単元名:2つの文章を読み比べ、読む力を深める
指標をもとに文章を読み比べ、読解力の深化を図りたい
興味や関心を高める
互いの考えを比較する
自分の思いや考えと結び付ける
実践の背景
- 実践校は中高一貫教育校のメリットを最大限に生かし、グローバル人材の育成を目指す中で、生徒が主体的・協働的に学ぶ授業展開を研究・創造することを目標としています。
授業改善のアプローチ
- 生徒に、2つの文章を読み比べることで、文章の主題を我が事として捉え抽象的な論述を具体的な事例に置き換えて腑に落ちるように理解する力や、それを今までの人生経験や他の文章との関係の中で比較・検討し、より深い理解に達する読解力を付けたいと考え、本単元を設定しました。
単元づくりのポイント
目標
- 文章の構成や展開を確かめ、内容や表現の仕方について評価したり、書き手の意図をとらえたりしようとする。
(関心・意欲・態度) - 文章の構成や展開を確かめ、内容や表現の仕方について評価したり、書き手の意図をとらえたりする。
(「C読むこと」の(1)のエ) - 評論文における語句の使い方やその知的背景などを理解し、語彙を豊かにすること。
(〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕の(1)のイの(イ))
展開
全7時間
- 第1次(2時間) ■内田樹「届く言葉」の構成や展開を確認する。
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- 文章の構成や展開について、自らの意見を考える。
- グループで意見を話し合い、共有する。
- 第2次(2時間) ■「届く言葉」における書き手の意図について考察する。
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- 書き手の意図について、自らの意見を考える。
- グループやクラス全体で話し合い、共有する。
- 第3次(2時間) ■様々な文章と読み比べ、批評の論点整理をする。
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- 教育に関する2つの文章を読み、「届く言葉」の論点を指標にして、教育に関する2編の文章を比較・評価した批評の論点整理をする。本時(2/2)
- 第4次(1時間) ■2つの文章を比較・評価した批評を書く
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- これまでの学習活動をふまえ、「届く言葉」の論点を指標にして、教育に関する2編の文章を比較・評価した批評を書く。
「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善
本時のねらい
- 2つの文章を読み比べ、文章の意図に関して、相対化や客観化を経た批評を書くための論点整理をすること。
授業場面より
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①本時の目標を確認する
随想で述べられた「届く言葉」をもとにA・B2つの文章を読み比べます。
ここでは、ワークシートに示された手順でグループでの話合いを進めていきます。自分にとって最も「届く言葉」はどちらの文章の、どの部分かを考え、各自が付箋にその文章を選択した理由を書き出します。同じ文章について、「引用が多く、現在の状況をまとめているが書き手の考えが十分に述べられていない」「根拠が数値等で明確に示されており、引用部分によって納得ができる文章だ」等の意見が交換され、生徒は文章の多様な捉え方に気付いていきます。 -
②グループで話し合う
縦にA・B2つの領域に分けた模造紙上でそれぞれの文章を、支持する、あるいは支持しないとした根拠を整理していきます。支持する理由はピンク色の付箋に、支持しない理由は青色の付箋に書き込んでいきます。
書き手の考えが直接書き出された箇所や引用をした意図、文章の構成から考えたこと等が根拠として述べられていきます。
捉え方の相違から話合いが活発になり、付箋が構造化されていきました。他者がどのような視点から比較や評価をしているか、関心を持って活動できていました。 -
③グループ毎に話し合いの内容を発表する
各班、A・Bそれぞれの文章について、肯定的な意見と否定的な意見に分けて発表していきます。
「筆者の意見がしっかり書かれており、届いてきた」という意見に対して、「具体的な対策が書かれておらず届いてこなかった」とする意見や、「実感を伴った体験談が心に届いた」という意見に「引用した体験談は印象深いが、書き手の考えとは言えない」等の意見が出てきました。
教師は、生徒が「自分とは意見が違うが納得できる他人の意見」をワークシートに記述することで、共感したり意見の相違を感じたりしながら、論点の整理ができるよう工夫をしています。
生徒はそれぞれの文章を支持する根拠について各グループで話し合われた内容を共有し、文章の構成や展開についても考え、書き手の意図を捉えていきました。 -
④論点を整理する
最後に発表を振り返ります。
生徒は、発表の内容を整理しながら書き留めることで、文章の読み比べの視点を広げていきました。
「自分では気付かなかった点を課題と考えていた人がいたが、改めてその点についても注目したいと思った」という振り返りからは、対話を通して文章を多角的に捉え、記述の分析を深める生徒の姿が見えました。
生徒は、本時の文章の読み比べから自分の考えを言葉でどのように表現するべきか熟考を重ねていきます。次時には「誰に」届けるのかを意識して、この2つの文章を比較・評価した批評文を書きます。
報告者:研修協力員 木下