アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:廿日市市立四季が丘小学校
教科等:5年国語科(平成29年6月)
単元名:新聞記事を読み比べよう

見出しや写真と本文を関係付けて、書き手の意図を読み取る力を育成したい

  • 粘り強く取り組む
  • 協働して課題解決する
  • 自分の考えを形成する

実践の背景

  • 実践校は全校児童約300名の小学校で、眼下に瀬戸内海の島々を眺める、自然に恵まれた環境です。
  • 学校で育成を目指す資質・能力を、「課題発見力」、「思考力・判断力・表現力」、「主体性」、「自己肯定感」の4つに整理し、学校教育目標「夢と志をもってチャレンジするたくましい児童の育成」を目指し、学び合いを通した授業改善に取り組んでいます。

授業改善のアプローチ

  • 約半数の児童が普段新聞を読んでいないという実態を踏まえ、新聞記事への興味が高まるように、単元前に教室に新聞を毎日置きます。
  • 教室に置いた新聞記事の中から、写真だけで構成した特別な新聞を作成し、単元の導入で児童に提示することで、「どんな内容だったのだろう?」と新聞記事が読みたくなるように働きかけます。
  • A社とB社で入れ替えた写真を提示することで見出し、リード、写真、本文とを関係付けて書き手の意図に迫ることをねらいます。
  • 単元末では、地元で行われたイベントに関する複数の記事から書き手の意図を読み取るという単元を通して学んだことを活用する場面を設定します。

単元づくりのポイント

目標

  • 新聞記事には意図があることを理解し、進んで書き手の意図を読み取ろうとしている。
    【国語への関心・意欲・態度】
  • 写真や見出しに気をつけて、記事の内容や書き手の意図を読み取ることができる。
    【読むこと イ】
  • 書き手の意図を考えながら、見出しの効果や工夫を読み取ることができる。
    【読むこと ウ】
  • 記事の内容や写真に合う効果的な見出しを工夫して書くことができる。
    【書くこと オ】
  • 新聞記事を読み、記事の中の表現の工夫について気づくことができる。
    【伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項 イ(ケ)】

展開

新聞記事を読み比べよう(全6時間扱い中第4時)

1

新聞の特徴や役割を理解する。(1)<

2

新聞の記事の構成や写真の役割について理解する。(1)

3

同じ題材の二つの新聞記事を読み比べ、それぞれの記事の内容を読み取る。(1)

4

同じ題材の二つの新聞記事を読み比べ、書き手の意図を読み取る。(1)(本時)

5

本文と写真に合った見出しを書き、それぞれのよさや工夫について交流し、思考を広げ深める。(1)

6

自分で選んだ新聞記事の書き手の意図を読み取り、交流し、単元を振り返る。(1)

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

  • 二つの新聞記事を読み比べ、書き手の意図を読み取ることができる。

授業場面より

  • ①書き手の意図を読み取るための視点を整理する

    書き手の意図を読み取るための視点を整理する画像

    「A社の記事の”主役”は『アユ』だ」という児童の発言を受け、「しぶきを上げるアユのアップの写真からも記事の”主役”が『アユ』であることが伝わってくる」と別の児童。教師が待っていた瞬間です。
      A社の記事の見出しやリードに着目して意図を読み取ろうとしていた児童も、「写真との関係にも着目しよう」と考えが広がっていきます。
      “主役”という言葉が児童の考えを促進するきっかけとなり、書き手の意図に迫っていきます。

  • ②書き手の意図を読み取り、交流する

    書き手の意図を読み取り、交流する画像

    児童は、B社の記事の書き手の意図も読み取っていきます。A社のときとは異なり、初めから見出し、リード、写真、本文を関係付けながら考えている児童が増えています。中には、記事の”主役”が『アユ』と『川』とで判断に迷っている児童もいます。ここに話し合い、考えを広げ深める必然性が生まれます。
      『アユ』か『川』か、記事の”主役”を判断した理由も含めてグループで話し合い、互いの考えを交流することで書き手の意図を明らかにしていきます。

  • ③2枚の写真を比べて考える

    2枚の写真を比べて考える画像

    「1000万匹のアユに着目したよ、リードや本文に何回も書いてあるよ」、「数が”主役”ではないよね、よみがえった川が”主役”だと思うよ」、「意図は『川がよみがえったこと』かな」、グループでの対話を通して、書き手の意図を読み取っていきます。
      「A社とB社の写真を入れ替えたらどうかな?」、写真と本文とを関係付けて書き手の意図に迫ることをねらい、教師は児童に問いかけます。「写真を入れ替えたら、本文と『川』との関係がなくなる」、児童が発言します。別の児童が「B社の記事は『環境を守る大切さ』を伝えたいと思うから、アユのアップの写真より、川でたくさんの人が活動している写真がいいと思う」と、書き手の意図を読み取っていきます。
      入れ替えた写真ともとの写真とを比べることで得られた児童の気付きです。

  • ④本時の学びを振り返る

    本時の学びを振り返る画像

    児童は本時の学びを振り返ります。「どんな気持ちで記事を書いたのか、伝えたいことは何かを考えながら読むのは楽しい」、「A社とB社の記事を比べて考えることで、書き手の意図を読み取る力がついたと思う」などと児童は振り返りました。
      同じテーマを取り扱った二つの新聞記事を比べることで、書き手の意図の違いが読み取りやすくなり、書き手の意図が読み取れたことを自覚している児童の振り返りにつながったと捉えられます。

報告者:研修協力員  木野村