アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:廿日市市立大野中学校
教科等:2年数学科(平成29年5月)
単元名:式の計算「毎月22日は何の日?」

命題が成り立つことを、文字を用いた式を活用し、一般的に説明する力を育成したい

  • 見通しを持つ
  • 互いの考えを比較する
  • 知識・技能を活用する

実践の背景

  • 各学年3学級の中学校で、小中一貫教育推進校です。
  • 学校として育成を目指す資質・能力を「説明力」「自己有用感」と設定し、対話的な学びを通して、互いの考えや意見などを交流し、学びを広げ深めていく授業づくりに、全教科で取り組んでいます。
  • 習得した知識及び技能を活用したり、思考力・判断力・表現力等や学びに向かう力・人間性等を発揮したりすることで、資質・能力の育成につながるような単元や題材をデザインするようにしています。

授業改善のアプローチ

  • 単元の前半で生徒が見いだした命題が成り立つことを、後半で文字式を使って説明できるようにすることを位置付けることで、学びに向かう力の育成を目指します。
  • グループで互いの考えを比べることで、文字を用いて表現したり、文字を用いた式の意味を読み取ったりし、文字を用いた式で数量及び数量の関係をとらえ説明できるようにします。
  • 「仮定を変えて新しい命題を予想する」という類推して考えた命題を説明することを通して、「文字を用いた式を活用することのよさ」が実感できるようにします。

単元づくりのポイント

目標

  • 様々な事象を文字を用いた式でとらえたり、それらの性質や関係を見いだしたりするなど、数学的に考え表現することに関心をもち、意欲的に問題の解決に活用して考えたり判断したりしようとしている。
    【数学への関心・意欲・態度】
  • 文字を用いた式についての基礎的・基本的な知識及び技能を活用しながら、事象を数学的な推論の方法を用いて論理的に考察し表現したり、その過程を振り返って考えを深めたりすることができる。
    【数学的な見方や考え方】
  • 事象を文字を用いた式で表現したり、式の意味を読み取ったり、簡単な整式の加法・減法の計算や単項式の乗法・除法の計算をしたりすることができる。
    【数学的な技能】
  • 単項式や多項式などの意味や文字を用いた式で数量及び数量の関係をとらえ説明できる。
    【数量や図形などについての知識・理解】

展開

式の計算(全14時間扱い中第10時)

1次 式の計算
1 文字式のしくみ(2時間)
  • カレンダーの数の並びから規則性を見いだし、文字を使った式で表し、説明することができる。
    (「2次 式の利用」で、「1次 式の計算」で見いだした規則性が成り立つことを文字式を使って説明することを位置付ける。)
  • 単項式、多項式、項、係数、式の次数などの意味を理解する。
2 多項式の計算(3時間)
  • 多項式の加法・減法、多項式と数の乗法・除法の計算ができる。
  • 多項式の加法・減法、多項式と数の乗法・除法の計算を、数の計算や第1学年で学んだ文字式の計算と関連付けて考えることができる。
3 単項式の乗法・除法(2時間)
  • 単項式の乗法・除法の計算ができる。
4 式の値(1時間)
  • 式を簡単な形に直してから、式の値を求めることができる。
2次 式の利用 (本時)
1 文字式による説明(3時間)
  • 文字を用いた式で数量や数量の関係を表現したり、その意味を読み取ったりすることができる。
  • カレンダーの数の並びから見いだした規則性が成り立つことを文字を用いた式を使って説明できる。
2 等式の変形(1時間)
  • 等式を変形することの必要性や意味を理解し、目的に応じて等式を変形できる。
3次 単元のまとめ(2時間)
  • 単元で学んだ数量の関係の仮定を変えた命題について考える。

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

文字を用いた式でカレンダーの数の並びから見いだした規則性が成り立つことを説明することができる。

授業場面より

  • ①問題解決の見通しをもつ

    問題解決の見通しをもつ画像

    教師は、図のようにカレンダーで「Xの形に囲まれた部分の数の和のきまり」を見つけるように生徒に問いかけます。前時に生徒が見つけていたきまりの一つです。
      「わかった!真ん中(Xの形の交差する部分)の数の5倍だ!」、教室に生徒の声が響きます。
      「その性質はどんなときでも成り立つの?」、文字を用いた式を使って一般的に説明することの必要性についての気付きを促すように、教師は生徒に問いかけます。
      生徒は前時までの学びを振り返り、「文字式を使えば数の性質がいつでも成り立つことが説明できそうだ」という見通しを持って、説明を書き始めました。

  • ②命題が成り立つことを説明する

    命題が成り立つことを説明する画像

    「5つの数は、n-2、n-1、n、n+1、n+2とおける…(A)」と書いていた生徒のペンが止まります。しばらく考えて、5つの数を「n-8、n-6、n、n+6、n+8(B)」と書き直しました。
      カレンダーの数の並びや数と数の関係に着目することで、(A)だと横に並んだ5つの数を表していることに気付き、自ら(B)に修正しました。
      事象の中に数量の関係を見いだし、文字を用いて式に表現したり式の意味を読み取ったりしている姿ととらえられます。
      一方で、(A)と書いたままの生徒や左上の数をnにおいて考えている生徒もいます。そこで、教師は対話を通して、説明する過程を整理するように生徒に働きかけます。

  • ③互いの考えを比べて説明を修正する

    互いの考えを比べて説明を修正する画像

    「真ん中の数をnにしたら、和が5nになったから、真ん中の数の5倍と言えるね」、「左上の数をnにしたら、和が5n+40となったんだけど、続きをどう説明したらいいのかな?(C)」、互いの考え方を比べていきます。
      グループでの対話を通して、(C)と説明した生徒は、式を変形すれば真ん中の数の5倍になっていることに気付き、納得します。
      また、2で(A)としていた生徒も、カレンダーの数の並びに着目し直すことで、(B)と修正して説明していきました。
      互いの考え方を比べ、文字を用いた式で数量及び数量の関係をとらえ説明し合うことで、説明を修正していきます。

  • ④類推して新たな命題を予想する

    類推して新たな命題を予想する画像

    Xの形の発展として、ある生徒は「Hの形に数を囲んだらどうなるだろう」と考えています。また、別の生徒は「縦に3つ、4つ、5つと数を囲んだらどうなるだろう」と、生徒自らが本時の学びを広げて、考えていきます。
      生徒は、「数の並び方や図形の対称性に着目すれば新たな命題が見いだせる」と考えていきます。
      3で整理した共通点を踏まえ、新たに見いだした命題を説明することを通して、「文字を用いた式を活用することのよさ」を実感し、深く学ぶ生徒の姿につながりました。

報告者:研修協力員  木野村