アクティブ・ラーニング授業実践事例
学校名:伊那市立東部中学校
教科等:2年理科(平成27年11月)
単元名:エジソン電球(電気の世界)
ICTを用いた遠隔合同授業の実現へ
興味や関心を高める
共に考えを創り上げる
思考して問い続ける
実践の背景
- 実践校は県内でも有数の大規模校ですが、ICTを用いて遠隔地の小規模校との合同授業に挑戦しています。これは、市全体で将来の少子化・人口減少に対応した諸課題に対応し、小規模校のデメリットを最小化させる試みです。
- 本実践では、実践校と山間部の小規模校とで学校間ネットワークを構築しテレビ会議システムを導入しました。都市部と山間部の2校で同時に展開する授業を通して、市内の中学生同士が互いに切磋琢磨できるようにしています。
授業改善のアプローチ
- 生活環境の異なる地域の仲間と「エジソン電球を作る」という共通の課題のもと、フィラメントとなるシャーペンの芯の太さ、間隔、電圧など条件を変えながら電球が長持ちする条件を考え、電気の世界の不思議さを実感する学びが実現されました。
- また、テレビ会議システムを利用した結果、距離を越えた対話的な学びが実現しました。少子化が進む山間部の学校にとって多様な考えに触れることは貴重な経験です。また、自分たちの学びを他校の生徒から認められる喜びにもつながりました。
単元づくりのポイント
目標
- 電流回路をつくり、電流計や電圧計、電源装置などの操作技能を習得しながら、回路の電流や電圧を測定する実験を行い、各点に流れる電流や各部の電圧に規則性を見いだす。また、電流によって熱や光などを発生させる実験を行い、電流から熱や光などがとり出せること、および電力のちがいによって発生する熱や光などの量にちがいがあることを見いだし、日常生活と関連づけて科学的に考察しようとする意欲と態度を養う。
展開
- 【電気の世界1】
- 静電気の性質を調べ、真空放電と陰極線の学習を通して電気の正体について詳しく学ぶ。豆電球のしくみを調べた後、「豆電球が光るときの様子をモデルを使って説明しよう」という課題に取り組む。
1-1 身近な静電気による現象 1-2 真空放電と陰極線 1-3 電流の正体 1-4 豆電球のしくみ - 【電気の世界2】
- 豆電球のしくみについてまとめをする。電流や抵抗、電圧の概念について学習した後、回路図をかけるようにし、電圧と電流の関係について調べる。
2-1 豆電球のしくみ 2-2 回路図の書き方 2-3 電圧と電流の関係 - 【電気の世界3】
- オームの法則についてまとめをし、練習問題を解く。そして、直列回路と並列回路の電流について予想を立て実験を行う。
3-1 オームの法則 3-2 回路に流れる電流 - 【電気の世界4】
- 直列回路と並列回路の電流についてまとめを行い、練習問題を解く。そして、直列回路と並列回路の電圧について予想を立て実験を行う。
4-1 回路に流れる電流 4-2 回路に加わる電圧 - 【電気の世界5】
- 直列回路と並列回路の電圧についてまとめを行い、練習問題を解く。さらに直列回路と並列回路の抵抗について学習する。その後、電気エネルギーの実験を行う。
5-1 回路に加わる電圧 5-2 回路全体の抵抗 5-3 問題練習 5-4 電気のエネルギー - 【電気の世界6】
- 電力と電力量についてまとめを行う。「長く点灯する電球を作ろう」という課題にクラスの仲間と共に取り組む。
6-1 電気のエネルギー 6-2 長く点灯する電球を作ろう:(本時)
「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善
本時のねらい
(ICT活用に関連して)
テレビ会議システムを用いることで、遠隔地の学校の生徒との交流授業を通して、いろいろな見方や考え方を共有することができる。遠隔地の学校と「エジソン電球を作る」という共通の課題に取り組むことを通して、自分たちの考えを伝えることができる。
授業場面より
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①実験計画を交流する
テレビ会議システムを使った交流場面です。両校の生徒は実験計画の説明を大型テレビを通して伝え合い、自分のグループの実験計画と比較しました。自分たちだけでは気付かなかった新たな工夫とその意図を知り、さらに追究意欲を高めました。
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②グループで実験をする
グループで実験計画に沿って長く光り続けるための条件を追究している場面です。条件を変えながら実験を重ね、なぜ消えてしまうのかを考察しています。両校の教師は、テレビ会議システムを通して互いの取組を伝え合いつつ実験をする時間を調整しています。
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③代表グループ同士の対戦
最も長く光り続けたグループ同士でテレビ会議システムを通して対戦する場面です。教室にデジタイマーが持ち込まれ、クラスマッチのように盛り上がりました。結果は小規模校が2秒差で勝利。対戦後は互いの健闘を讃え合い、勝利の要因を考察し合いました。
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④現象を捉え直す
両校同時に行われた振り返りの場面です。「電球が光る」という可視化された現象を、電流、電圧、抵抗(量)の関係で捉え直しています。このように探究の過程全体を主体的に取り組めるようにした単元により、生徒の知的好奇心が刺激されました。
報告者:研修協力員 谷内