アクティブ・ラーニング授業実践事例
学校名:安曇野市立三郷小学校
教科等:5年算数科(平成27年10月)
単元名:面積
対話する必然性を生み出し深い理解へ
見通しを持つ
思考を表現に置き換える
知識・技能を活用する
実践の背景
- 学校教育目標「自ら学ぶ子ども 心豊かな子ども 明るくたくましい子ども」を掲げる県下有数の大規模校です。一人一人の児童に確かな学力を育むため、「主体的・協働的な学び合い」を進めています。
- 学習指導案を作成する際には「私の授業改善の課題」を明記することが決められており、授業者が自分自身の課題を明確にしながら授業改善に取り組めるように工夫されています。
- 同じ校区の中学校との合同研修会(授業公開を含む)を開くなど、地域の子供たちの育ちを同じ目線で見つめ、小学校6年間、中学校3年間の学びをつなげようと努めています。
授業改善のアプローチ
- 算数科の研究テーマは「自分の考えを数学的に表現しながら主体的・協働的に学ぶ授業づくりに関する研究」です。重点グループの教員は互いに授業を見合いながら研究を進めてきました。
- 本実践の授業者は学級の児童が話し合う場面に着眼し、仲間同士で話し合いがなかなか進んでいかない実態を捉えました。そこで、日常の学級経営から意見を言い合える関係性の構築に努めました。
- 本実践は対話を通して深い理解へ至る学習過程を改善するとともに、タブレットPCを使って思考の可視化や共有化を図り、考えを深める対話を実現しようとしたものです。
単元づくりのポイント
目標
- 既習の面積公式を基にして、三角形、平行四辺形、ひし形及び台形の面積を求める公式を進んで見いだそうとする。
【算数への関心・意欲・態度】 - 既習の面積公式を基にして、三角形、平行四辺形、ひし形及び台形の面積を工夫して求めたり、公式をつくったりすることができる。
【数学的な考え方】 - 三角形、平行四辺形、ひし形及び台形の面積を求める公式を用いて、面積を求めることができる。
【数量や図形についての表現・処理】 - 三角形、平行四辺形、ひし形及び台形の面積の求め方を理解する。
【数量や図形についての知識・理解】
展開
面積(全14時間)
- 1
- 三角形の面積(4):直角三角形、鋭角三角形、三角形の面積の公式など
- 2
- 平行四辺形の面積(2):平行四辺形の面積、平行四辺形の面積の公式
- 3
- いろいろな三角形・四角形の面積(3):高さが外にある場合、台形・ひし形の面積
- 4
- 2つの三角形の面積が等しいことの説明(1):本時
- 5
- いろいろな面積の問題(4):三角形の高さと面積の比例関係など
「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善
本時のねらい
2つの三角形の面積が等しくなる理由を考えて文章に表す場面で、友達と話し合って共有したその理由をノートへ記述し、それを映像で映し出して紹介し合い、表現のよさや正答条件を確認したり自分の書いた文章を見返して表現を修正したりすることを通して、2つの三角形の面積が等しくなる理由を理解するとともに、筋道を立てて文章に表すことができるようになる。
授業場面より
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①提示された図から情報を得る
図を提示した教師は「面積の等しくなる三角形のペアがあるよ」と問いかけました。子供たちは身を乗り出して図を見つめ、前時までの学習を活用して口々に予想を発言します。教師は子供たちと「△ABCと△DBCの面積が等しい」ことを共有し「底辺と高さが等しいから面積も等しくなる」という根拠を確かめ合いました。そんな中、もう一つのペアを見つけた児童が発言したくてウズウズしています。
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②追究方法を見通す
その児童は「△ABEと△DECのペアの面積も等しい(③)」と語りました。「そうそう!」「なぜ?」。子供たちが一斉につぶやき始めます。対話する必然性が高まったと判断した教師はこのペアの面積も等しいことを告げ、子供たちと追究方法を相談しました。その結果、「個人→グループ→全体」と考えてから「最後は一人で説明できるようになろう(④)」という学習の見通しを持つことができました。
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③グループで課題解決を図る
グループで話し合う場面です。うまく説明できなかった児童(⑤)も友達の説明(⑥)を聞くことで説明に必要な条件に気付きます。そして⑦のように自ら説明を試みました。このように書いたり消したりの表現を繰り返す場面にタブレットPCは最適です。複数の図形の関係に着目した子供たちは、筋の通った説明になっているかどうかを確かめながら対話を繰り返すことができました。
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④学習の成果を確かめる
全体で説明を聞き合う場面です。教師は説明する児童のノートを電子黒板(⑧)に映しました。⑨のように画用紙を使った説明も取り上げて、子供たちの理解を多方向から促します。学習の成果を黒板(⑩)にまとめた教師は練習問題を提示しました。練習問題を通して別の場面に適用して考えたことで、子供たちはさらに理解を深めることができました。
報告者:研修協力員 谷内