アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:由利本荘市立西目小学校
教科等:6年算数科(平成28年11月)
単元名:速さの表し方を考えよう

場面に応じて数学的な見方・考え方を用いる力を育成したい

  • 見通しを持つ
  • 互いの考えを比較する
  • 思考して問い続ける

実践の背景

  • 実践校は、学校教育目標を「ふるさとに学び、自分の生き方を真剣に考える子どもの育成」としてふるさと西目に学び、西目らしさの薫る体験的な学習活動や問題解決的な学習活動を重視し、研究主題は「学びの自立を目指して」としています。また、コミュニティ・スクールとして、地域とともに学校づくりを進めています。
  • 開発実践フィールド校として、全職員でアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善に取り組む過程を、県教育委員会・市教育委員会・県総合教育センターと連携し、推進地域に公開をしながら進めています。
  • 子供自身が課題を発見し、解決し、発信していく単元構想の中で、どのように事象とかかわり、他者とかかわり、最終的に子供自身が自己の高まりとして手応えを得るのか、継続した見取りと教師の出番の在り方を問いながら、子供の学び続ける意欲が醸成されることを「学びの自立」と捉え研究を推進しています。

授業改善のアプローチ

児童の日常生活において「速さ」は、走る速さや乗り物の速さなど、身近な体験に結びついています。問題解決をするにあたって、児童自身が速さは何と何で決まるのかを意識し、既習の単位量あたりの大きさの考えを生かすことに気付くように互いの思考をつなげていきます。また、数字や式の意味を明らかにし、筋道立てて説明する場を設定し、分かりやすく表現する力も伸ばしていくことができるように単元を構築しました。本時では、これまで学んできた公倍数の考えを用いて時間や距離をそろえて比べる考えも取り上げます。その上で、単位量あたりの大きさの考えを使って比べる方法が便利であることを、実感を伴ってとらえることができるようにしていきます。考えのよさを捉えることが、その後の生活や学習に生かしていこうとする主体的な学びにつながるように授業改善を試みました。

単元づくりのポイント

目標

  • 速さを単位量あたりの大きさの考えを用いて数値化したり、実際の場面と結びつけて生活や学習に用いたりしようとする。
    【算数への関心・意欲・態度】
  • 速さの表し方や比べ方について、単位量あたりの大きさの考えを基に数直線や式を用いて考え、表現することができる。
    【数学的な考え方】
  • 速さに関わる数量の関係において、速さや道のり、時間を求めることができる。【
    数量や図形についての技能】
  • 速さは単位量あたりの大きさを用いると表すことができることを理解する。
    【数量や図形についての知識・理解】

展開

1
長さを決めたり、時間を決めたりして、歩く速さを変えて「速さ」を決める量を体験的にとらえ、速さが「距離」「時間」の2量から構成されていることを実感する。
2
単位量あたりの大きさの考えを用いて、距離と時間がどちらも異なる場合の速さを比べる。(本時)
3
前時の学習を基に、自分の歩く速さや走る速さの表し方を考える。
4
新幹線のはやて号とのぞみ号の速さを比べる活動を通して、用語「時速」「分速」「秒速」の意味を 知り、公式をつくり出し、速さを求める。
5
ツバメの速さと時間から道のりの求め方を考える。道のりを求める公式について考え、それを用いて様々な場面の道のりを求める。
6
台風の速さと道のりから時間の求め方を考える。時間をⅹ分として式に表し、前時までの学習を活用して様々な場面の時間を求める。
7
時間を分数で表し、車いすで走る速さや飛行機の時間を求める。
8
速さが一定のときに、道のりと時間の関係について考える。
9
1時間に90枚印刷する機械と、12分間に20枚印刷する機械の速さを比べる活動を通して、作業の速さについて考える。
10
学習内容を適用して様々な場面の問題を解決する。
11
学習内容を適用して生活の様々な場面の問題について考える。

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

単位量あたりの大きさの考えを基に、距離と時間がどちらも異なる場合の速さの比べ方について考えることができる。

授業場面より

  • ①問題解決の見通しを持つ

    問題解決の見通しを持つ画像

    問題場面での児童の疑問を生かし、「距離も時間もちがうとき、速さを比べるにはどうすればよいのか」という課題を設定していきます。その際、問題場面の速さを比べるためには、既習の公倍数の考えを用いたり、距離か時間のどちらかをそろえたりして考えていくのではないかと気付いた児童の発言を全体で共有したことが、速さを比べるにはどうしたらよいのか見通しを持って考察していく児童の姿につながりました。

  • ②個人で問題解決する

    個人で問題解決する画像

    距離も時間も異なる場面で速さを比べるにはどうしたらよいのかについて個人で考える場面です。教師は、児童が考えた「公倍数の考え方」「1mあたりの時間の考え方」「1秒あたりの距離の考え方」というキーワードを黒板に示しました。また、解決の糸口が見つからない児童には、教室の掲示物により5年生の混み具合の学習を想起できるように支援し、1あたりの量に目を向けることができるようにしていきます。このような教師の支援が、「公倍数を用いた考え方」と「単位量あたりの大きさにそろえる考え方」を比較しながら速さを比べようとする主体的な姿につながりました。

  • ③互いの考えを比較・検討する

    互いの考えを比較・検討する画像

    速さの比べ方について互いの考えを比較・検討する場面です。教師は、小黒板を用いて児童の考えを可視化していきます。また、児童の考えた式や答え、数値の表す意味について児童自身が問い返し、互いの考えの根拠を明らかにしながら共通点や相違点に目を向けて考えられるように話し合いをコーディネイトしていきます。互いの考えが可視化され、話し合う視点が焦点化されることにより、「公倍数の考え方」や「単位量あたりの考え方」を比較し、それぞれの考え方を場面に応じて使っていこうとする児童の学びにつながりました。

  • ④学びのよさを自覚する

    学びのよさを自覚する画像

    学習をまとめ、振り返る場面です。教師は、「公倍数を用いた考え方」や「単位量あたりの考え方」を場面に応じて使い分けることのよさが実感できる適用問題を用意しました。また、今後生かしていきたいことという視点を提示し、自分の学びを見つめ直すことのできる場を確保しています。それが、「私は、最初、公倍数の考え方を使って速さを比べて問題を解くことができました。しかし、みんなでいろいろな考え方を出し合って比べたり、単位時間あたりの考えを使って問題を解いてみたりすると、速さを表すときは、単位時間当たりの速さを表す考え方が分かりやすいと感じました。これからは、公倍数を用いた考え方や単位量あたりの考え方を場面に応じて使い分けていきたいです。」という本時の学習で考えたことを今後に結び付けていこうとする姿につながりました。

報告者:研修協力員  稲岡