理事長あいさつ

ここから始まる教員制度改革
-「教職員支援機構」の新たなミッション-

独立行政法人教職員支援機構
理事長 高岡信也

教育改革のキーパーソンは教師

現代社会は、知識基盤、生涯学習の社会です。未来を担う子供たちに大切なことは自ら課題を発見し、主体的に考え、行動できる力、新たな価値を創造する力を身につけることです。それを実現するために、学校教育は、20世紀的な「知の伝達」という機能を乗り越えなければならず、「創造的な学びの実現」というこれまでに無い新たな課題を担わなければなりません。
未来人の教育を担う教師は、「何かを知っている人」であるだけでは、もはや不十分です。子供たちに生涯を通じて学ぶ力、溢れる情報を自ら主体的に選択する力、予測不能な未来を切り開き、逞しく生きる力を育むことのできる高度な専門的職業でなければなりません。
時代と社会が求める教育の課題の達成や解決の成否は、その時々の教師にゆだねられます。それは今次の教育改革でも強調されています。教育再生実行会議が「第7次提言」(平成27年5月)で取り上げたことを皮切りに、馳浩前文部科学大臣は、「教育改革というパズルの最後の1ピースは、教師。教育再生パズルの完成のため、教師の資質向上に取り組む」と述べています。今や問題提起の段階を過ぎ、具体的な政策とシステムの構築が課題なのです。

教育公務員特例法等の改正が意味するもの

今回の法改正の趣旨は、端的に「学び続ける教員像の理念の具現化」にあります。「学び続ける教員像」とは、教員が、生涯を通じて、自ら職能成長を図るための努力、つまり「研究と修養」(教育基本法第9条)を怠らない職業人であり、余人をもって代え難い高度な専門的な職業人であることの宣言です。その崇高な理念を、絵に描いた餅にはしないという決意表明です。

教育公務員特例法の改正では、新たに、教員等の任命権者(教育委員会等)が教員の資質の向上に関する「指標」を定めることとなりました。指標を定めるために任命権者は、大学等の関係機関とともに「協議会」を設置します。協議会は、文部科学大臣が定める指針を参酌しつつ、教員の経験年数や職責・職能に応じて求められる資質・能力等について検討し、「研修計画」を定めるものとされています。

また、協議会設置の狙いは、採用と研修は行政、養成は大学という役割分担、棲み分けからの脱却という点にあります。ずっと続いた慣習を修正しよう、行政と大学がともに手を携えて地域の教員を育成しよう、行政からの養成への要望を大学が真摯に受け止めようという視点です。大学は、初任段階から中堅、ベテラン、管理職に至るすべての現職教員研修のあり方について意見を述べ、かつ保有する知的ストックを積極的に生かす場を構築します。教員の専門性の高度化と体系化を実現するために、両者のパートナーシップの確立こそが協議会設置の眼目です。教職大学院の全国展開等、地域における協働の環境整備も進んでいます。

「センター」から「機構」へ 新たなミッション

中央教育審議会答申は、「養成・採用・研修を通じた体系的、総合的支援拠点」として、「独立行政法人教員研修センターの機能を格段に強化して整備」する方向を示唆しました。

今回の法改正では「独立行政法人教員研修センター法」の一部改正として「独立行政法人教職員支援機構」の設置が明記されました。従来の教員研修センターは、都道府県等から推薦された教員を研修生として受け入れ、中央研修、教育課題研修を実施してきました。この直営型の研修実施機能は、時々に改善を加えながら今後も大事にしたいと考えています。一方で、養成・採用・研修の一体的改革を担う中核拠点という新たなミッションを実現するためには、思い切った機能強化が必要です。

第一の機能 関係機関間ネットワークの構築

教職員支援機構(以下「機構」)の最大のミッションは、全国の養成・採用・研修に携わる関係諸機関をつなぐネットワークの構築です。今後、教育委員会と関係大学等とで構成する「協議会」で、「指標」や「研修計画」の策定を進むと思われるので、それに資する研究情報・データ、全国的な進捗動向に関する調査結果等を提供する相談窓口を、教育委員会と関係大学等向けに設置します。また、教職大学院との連携・協力の促進も重要課題です。すでに約20校の教職大学院と連携・協力協定を締結して、研修プログラムの活用や先進的な研修プログラム開発を始めています。今後、教職大学院の組織強化、研究活動や大学院教育の改善に向けたセミナーの開催等、大学院間のネットワーク構築に取り組んでいきます。

第二の機能 政策提案型研究開発の実施 

前組織「教員研修センター」は、現職教員に対する研修実施機関として存在しました。今後は、養成・採用・研修の改善を目的とした多様な制度の構築を図る上で、政策提案型の研究開発機能を保有することが重要です。平成29年4月から、この政策研究プロジェクトを立ち上げ、専門研究者による研究開発に着手します。研究プロジェクトは、「指標」や「研修計画」策定に寄与する教員の専門職基準に関する理論的研究、世界の養成・採用・研修や管理職登用・資格制度に関する国際比較研究、新学習指導要領が示す新たな学びのあり方、授業改善に関する調査研究、教職員の多忙化を縮減する業務改善方策(タイムマネジメント)に関する調査研究、採用試験の効率化に関する調査研究等、多岐にわたります。

これらの研究プロジェクトは、国内外から招聘するフェロー(専任)および客員フェローの研究者スタッフが担い、2~3年の研究期間に明確な成果を公表してもらいます。これらの成果は、関係機関間のネットワークを通じて、全国に提供され、エビデンスベースの政策や施策の立案に生かされるはずです。

第三の機能 多様な研修ニーズに対応するコンテンツの開発

研修の高度化、体系化を促進する先導的プログラム開発と中央研修等の直営研修事業への導入も重要な課題です。一方、教員一人ひとりが、自在に研修に接近できる環境を整備することも一層重要です。教員の研修は、個人の必要に応じて行う自己研修から教職大学院派遣制度等の長期の研修まで、多様に準備されるべきです。特に、校内におけるOJT研修へのコンテンツの提供は、チーム学校の組織力を高める上で重要な課題だと思います。組織のマネジメント、カリキュラム・授業改善マネジメント、教育課題別研修教材等を開発し、動画を含む多様なメディアによって提供しなければなりません。

「学び続ける教員像」の実現のために

教特法等3法の改正は,教員をめぐる制度・政策の大きな転換点です。時代と社会の変貌,学校教育への期待の変化が「崇高な使命の自覚に基づく研究と修養」(教育基本法第9条)の理念を再確認させ,具体的な研修環境の再構築にまで及びました。しかしここが到達点ではありません。何時でも,何処でも自在に研修できる環境の構築に向かって,新しい支援機構は,できることを何でもやろうと思います。

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