令和6年度NITS調査研究プロジェクトの概要と進捗
教職員の学びに対する支援を充実させるためには、教職員の学びを取り巻く環境や学びの内実に関する信頼性の高い知識・知見が欠かせません。そこで教職員支援機構(以下、NITS)では、内外の研究者の参画を得ながら教師の養成・採用・研修の改善に資する専門的・実践的な調査研究プロジェクトを実施しています。
今回は、NITSが現在取り組んでいる調査研究プロジェクトの概要と進捗を紹介します。興味や関心がありましたら、これまでに公表している報告書や今後公表される報告書をぜひご覧いただければ幸いです。
1.教職員等中央研修の高度化・体系化(令和4年度~)
本研究は、NITSにおける教職員等中央研修の高度化・体系化を実現するために、教職員等中央研修の受講者や教育委員会を対象とした質的・量的調査を通して、教職員等中央研修の成果を明らかにすることを目的としています。本プロジェクトのキーワードは「研修転移」にあり、研修の成果を、参加者による研修直後の「反応」だけでなくその後の「学習」や「行動」まで視野に入れて検討してきました。さらに、中央研修後の「学習」や「行動」の変容を支援する研修のありかたを模索し、試行実施してきました。現在、その内容をとりまとめた最終報告書を作成中ですので、公開まで少々お待ちください。
2.ニーズベースの研修支援モデルの構築と実装化(令和4年度~)
本研究は、個別最適な学びを掲げる令和の日本型学校教育に実効性を与える教師の継続的な学びを支える教員の資質向上のシステム構築に貢献するために、①研修ニーズの把握、②研修と学びの実態の把握、③研修の即時的・波及的効果測定に向けた、システムの検討と試行についての実証的知見と研究的知見を構築することを目的としています。今年度は、いくつかの都道府県を対象に実施した、教職員の「潜在的な研修ニーズ」を可視化するために実施したアンケート調査結果を分析するだけでなく、その結果をもとに、各都道府県の教育委員会・教育センターにて報告会・協議会を開催し、協働的な研修開発・改善に取り組んでいます。
3.日常的な校内研修の充実(令和4年度~)
本研究は、各学校において中心となるリーダーをどのように育成するか、また継続的な実施のための校内組織をどのように構築していくかについて、校内研修文化の根付いた学校への訪問や教育関係者を対象とした質的・量的調査を通して手がかりを得、それを分析・発信し、全国的な校内研修のさらなる充実に繋げることを目的としています。今年度は、校内研修の取組が活発な公立学校を2校訪問し、質的調査を実施しました。単に校内研修の取組を紹介するのではなく、校内研修を取り巻く全国的課題や学校特有の課題とどう向き合い、それをどのようにして乗り越えてきたのか、そこにはどのような要因があったのかを解明することをめざしています。これを通じて、校内研修の「日常化」「組織化」を支える環境や条件の解明に取り組み、リーダー・ファシリテーターの育成に還元したいと考えています。
4.教職の魅力向上に資する教育機関(令和4年度~)
本研究では、「教職の魅力向上」というテーマで、特に「養成-採用-研修」とその接続にスポットを当て、教職の魅力がどのように[構築/剥落]していくかを、明らかにします。その中で「養成-採用-研修」とその接続の各段階において、どのような成果と課題が見られるのかを質的・量的調査を通じて分析し、その特徴的な点とそれに対する有効な施策の提言を行うことで、国内の教育機関の活動に資することを目的としています。本研究では、教職志望学生を対象にしたインタビュー調査・アンケート調査に取り組みました。インタビュー調査からは、今日の学生が、転職を視野に含めた柔軟なキャリアパスを描きながら教職を選択する様子が見られました。また、アンケート調査からは、実際に教職を選択する学生の感じる「教職の魅力」を、労働条件や職務の特性など複数の側面に着目して分析を進めています。これらの成果をとりまとめた最終報告書を令和7年7月下旬に公開予定です。今しばらくお待ちください。
5.ICTを活用した学習指導の充実(令和4年度~)
本研究は、全国の教育センター・教職員等、および国内外のICT先進校(先進地域)を調査対象とし、アンケート調査、ヒアリング調査、実地調査等をとおして、それぞれの実態、成果や課題等を整理し、データ化することを目的としています。今年度は、中央研修参加者を対象としたアンケート調査を分析し、クラウドの活用に関する教職員の認識や、その活用の実態が各教員の授業観・学習観・仕事観とどう関連しているのかを明らかにし、多様な教員のICT活用を支える方策の検討に取り組んでいます。現在、この成果をとりまとめた最終報告書を作成中ですので、公開まで少々お待ちください。
これらの調査研究プロジェクトの成果報告(中間報告・最終報告)については、令和7年4月より、随時「調査研究」ページで公開する予定です。
ぜひご覧いただき、皆様の学びの一助になれば幸いです。