受講者の意識について:対面の研修とオンラインの研修との比較(令和4年度調査研究プロジェクトの年度報告書について)

当機構では、現在6つの調査研究プロジェクトを実施しています。
そのうち、令和4年度から継続して実施している「ニーズベースの研修支援モデルの構築と実装化に関する調査研究プロジェクト」の年度報告書を公開しましたので、その概要をお知らせいたします。
(以下、プロジェクトリーダーである百合田真樹人教授による執筆)

新型コロナウイルス感染症の蔓延によって、独立行政法人教職員支援機構(NITS)が実施する研修も、つくば本部での対面ではなく、オンラインでの実施に切り替えられました。子どもたちがさまざまな教育活動の機会を失ったのと同じように、全国の教育委員会や教育センター等から推薦された教職員の方々が一堂に会して、学びをともにして交流する機会は大きく損なわれました。

それでも、学校で1人1台端末環境が整備されてGIGAスクール元年と言われたように、NITSが実施する研修もオンラインに移行したことで、新たな学びの機会の提供が始まりました。現在も、インターネット上にあるNITSのサイトからは、幅広い内容で幾つものタイプの研修動画が公開されており、これまでNITSが実施する研修を受講する機会のなかった教職員の方々も、質の高い研修を提供する機会とチャンネル(手立て)を得ることにつながりました。

ただし、こうした新たな学びの機会と手立ては、それまでに幾度となく検証されて改善されてきた既存の(研修の)学びの機会と手立てに比べて、遥かに未完成な状態にあるといえます。研修を提供する新たな機会と方法が得られたことを評価する一方で、その研修に対する受講者の反応や従来の研修との比較などに積極的に取り組み、そのあり方や方法の改善と刷新を図ることが、今まさに求められています。

NITSでは、中央研修の受講者を対象にした研修への期待度(事前調査)と受講した研修の(同僚への)推薦度(事後調査)を、オンライン研修と対面研修のそれぞれで調査しています。令和4(2022)年度に実施した研修の調査結果からは、オンライン研修では事後の推薦度が事前の期待度を9%下回ることが確認されました。しかしながら、対面研修では事後の推薦度が事前の期待値を26%上回り、受講者が研修(または研修に参加したこと)を肯定的に評価していることを示唆しています。

NITSの中央研修は宿泊を伴います(対面の場合)。そのために、これまで参加された教職員の方々からは、事前の業務整理や引き継ぎの苦労や、家族との連絡調整の難しさの声も聞かれます。それらの難しさが、事前の期待値を(オンライン研修に比べて)低くしているのかもしれません。また、家族との連絡調整は別にして、業務整理などの難しさが研修への参加障壁として存在することも示唆されます。オンライン研修の事前の期待値は(対面研修に比べて)高いことから、研修へのアクセスの多様化は、研修の参加障壁を低減することに有効な方法であると考えられます。ただし、オンライン研修では受講後の推薦度が期待値を下回ることから、オンライン化することで失われる要素を同定し、その改善や補完を図ることが重要になりそうです。

ただし、これらの仮説を検証するためには統計的な検定が必要です。今回のレポートでは、受講者の反応を利活用可能なデータとして調査する方法とその試行の結果を報告したものです。昨年度に新たに試行した受講者の反応を調査する方法からは、従来の満足度や有意義度の調査方法では判定できなかった受講者の反応の差(例:オンライン研修と対面研修)を測定して示し得ることを確認しました。詳しい調査方法などについては、別途、下記のリンクからレポートをダウンロードしてご覧ください。

なお、受講者の属性や記述回答等を組み合わせた分析や統計的な検定は、令和5(2023)年度に実施する予定です。この仮説についても、令和5年度のレポートで報告できる予定です。