NITSニュース第81号 平成31年3月8日

小学校外国語教育、移行措置期間二年目に取り組みたいこと

文部科学省、国立教育政策研究所 教育課程調査官 直山木綿子

ご存知の通り、2020年度新学習指導要領全面実施により、小学校中学年に外国語活動年間35単位時間、高学年外国語科年間70単位時間が導入されます。全面実施に向けて今年度と次年度の移行措置期間に各自治体及び各校でそのご準備をいただいているところです。そこで、移行措置期間初年度が終わろうとしている今、改めて全面実施までの間にお取り組みいただきたいことについて、述べたいと思います。

お取り組みいただきたいことは、以下の四点です。①「言語活動を通して」の意味を理解し、実践をする。②指導者の英語力をブラッシュアップする。③高学年における「読むこと」「書くこと」の指導の在り方について理解し、実践をする。④小中連携をより一層進める。これら四点のうち、①について取り上げ、この場で述べることにします。

「言語活動を通して」という文言は、新学習指導要領 外国語活動及び外国語の目標に記されているものです。それは、小学校のみならず、中学校、高等学校の外国語の目標にも記されており、「言語活動を通して」コミュニケーションを図る(素地/基礎)資質・能力を育成することを目標としています。では、この「言語活動」とは何でしょうか。

「現行中学校学習指導要領 外国語 解説」には、「言語材料についての知識や理解を深める言語活動から,考えや気持ちなどを伝え合う言語活動まで~」と記されており、言語活動には二種類あることが分かります。一方、2017年に文部科学省が発行した「小学校外国語活動・外国語科 研修ガイドブック」においては、次のように記されています。「言語活動は、言語材料について理解したり練習したりするための指導と区別されている。実際に英語を使用して互いの考えや気持ちを伝え合うという言語活動の中では~。」このことから、これまでの二種類あると捉えていた言語活動を、「実際に英語を使用して互いの考えや気持ちを伝え合う」活動とし、言語材料について理解したり練習したりするための指導は、言語活動を支えるのに必要なものであることが分かります。

実際には、指導者が子供と既習語句や表現等を使って、本当のことをやり取りして授業を進めることが大切になります。たとえば、文部科学省が開発・配布をした新教材(中学年用Let’s Try!、高学年用We Can!)には、デジタル教材で音声を聞き取るLet's Listenという活動が設定されています。活動を行う際には、まず誌面にあるイラストや写真について、Do you like ~? Who is this boy? Can you play badminton? What’s this? What vegetable do you like? などの既習表現等を使って指導者が子供とやり取りをし、どのような内容が扱われているのかを子供に予想させたり、予備知識を持たせたりします。そのうえで、音声を聞かせます。 また、子供の実態に応じて、数回聞かせたり、すべてを聞かせるのではなく、一部だけを扱ったりする工夫も大切です。

このように実際に英語を使って子供が考えや気持ちを聞いたり話したりする機会をことあるごとに設定することを通して、子供に既習表現に慣れ親しませたり、活用させたりすることが大切です。