NITSニュース第80号 平成31年3月1日

インクルーシブ教育の実現に向けて

FR教育臨床研究所 所長 花輪敏男

インクルーシブ教育とは

そもそもインクルージョン社会というのは、障害のある人もない人も、互いに住みよい社会というものです。したがって、インクルーシブ教育とは、障害のある子どもが、差別を受けたり、生活しにくさや学びにくさを感じたりしないで、学校生活を送ることができるということであり、障害のない子どもも、共感すること・違いを認めること・思いやりの気持ち・助け合うこと等多くのことを学び、成長できるということも大事なことであるということなのです。

新たな課題

特別支援教育に転換されて10年が過ぎました。行政的には年々充実・発展してきていると思いますが、うまく機能しているのでしょうか。

支援体制の充実・整備が「支援先の振り分け」になっていないでしょうか。分業ではなく「支援の重なり」が重要なはずです。たとえば服薬をしている子でも、学校生活では「合理的配慮」が保障されていることが重要であるということです。

個別指導と称してドリルだけというところはありませんか。社会性の障害なのに教科学習をしているところ(腹痛に目薬)はないのでしょうか。

支援員を配置している市町村が多くありますが、支援員の方に具体的な支援の仕方を伝えないために、ただお世話をしているだけのところが多くみられます。

今は「ハードは揃ってきたのでソフトの面を頑張りましょう。」という時期に来ているのです。

ベースは教室

日常的な学校生活の中で、障害のある児童生徒に対して「合理的配慮」をしっかり保障するということが重要です。「ベースは教室」なのです。

これらの「特別な配慮」が、日常的に保障されていくことが重要です。

かかわりの主体は教師

支援体制が整備されたり、他の職種が学校へ入り込んだりしてくると、「教師のお任せ体質」が問題になってくると思います。

横(福祉・医療等他分野)と縦(切れ目ない支援)の連携についても、連携先にお任せするのではなく、専門家等の力を借りて自分(教師)たちが取り組むという姿勢が必要であると考えています。「かかわりの主体は教師」であると強く思っています。

ケミストリー

発達障害の二次障害として、いじめ・不登校・非行・中途退学等があげられます。つまり教育相談や生徒指導と深く関連するということです。さらに、学級経営や進路指導とも関係してきます。

行政が縦割りで物事が進んでいくことは、ある意味やむを得ませんが、学校がそうであってはなりません。さまざまな分野と関連付けながら進んでいく必要があります。ケミストリー(化学反応)が起きることが重要です。そのためには、連立方程式を立式する必要があると思います。そして、立式するのは地域では教育委員会になりますし、学校では管理職の仕事となると思います。

ぜひ、これらの視点を確認して、地域や学校のリーダーとしてご活躍いただきたいと願っています。