NITSニュース第76号 平成31年2月1日

まず動き始めることが大切

岐阜聖徳学園大学 教授 玉置崇

第6回中堅教員研修にご参加の皆様、学校現場に戻りどう過ごされているでしょうか。研修最終日の最後講義「リーダーシップ」を担当させていただいた岐阜聖徳学園大学の玉置です。 2週間にわたって現場を離れていたわけですので、その間に起こった様々なことを聞き、対応すべきことも多々あり、あっという間に数日が過ぎたと感じておられるのではないでしょうか。

講義では、校長時代に私の学校づくりを大いに助けてくれたミドルリーダーを数人紹介しました。覚えておられますか。 その中の一人は、「中学生は助けられる人ではなく、助ける人だ」という、あの「釜石の奇跡」の事例をもとに発想し、「次年度は中学3年生の学年主任をさせてください」と立候補し、消防署の多大なる協力を得て、300人近い3年生全員に一人4時間の救命講習を受講させた教員でした。

彼の提案と実践により、校長であった私は「本校は卒業証書と普通救命講習認定証がもらえる学校です」というキャッチフレーズを作りました。そして「いのちを実感するプロジェクト実践」を打ち上げ、学校が一体となって、いのちをテーマとした様々な教育活動を行いました。その後、私も彼も異動したのですが、「3年生普通救命講習会」は、消防署はじめ多くの方の協力を得て、現在も続いています。また、保護者の中に認定講習指導ができる資格をとった方がいらっしゃいます。

長年続いていますので、様々なエピソードが生まれています。その一つに、高校生となった卒業生が、実際にAEDを使っていのちを助けたという例があります。その生徒は「中学生のときの講習が役立った」と消防隊員に語っていたそうです。

ちょうど今、学校は来年度の教育構想を練る時期です。来年度構想を練るのは、管理職だけの仕事ではありません。全教職員で本年度を振り返り、次年度構想を考えることが大切です。

私が30歳ごろの話ですが、形式的に行われる「年度末反省会」に空しさを感じて、教頭に「私に年度末反省会を仕切らせて下さい」と、申し出たことがあります。「玉置がそういうなら、提案してみなさい」と私にバトンを渡されました。今思い出しても、腹が据わった教頭です。

人は、こうして全面的に任されると意気に感じるものです。私は、学校が抱えている課題を6つ掲げ、先生方には自分が考えてみたい課題を選び、その課題解決案が出るまで話し合いを続けてもらいました。その結果、これまでにない実効性のある年度末反省会となりました。教頭は、熱心に明日の学校を語り合う教職員に感動したのだと思います。遅くまで話し合っているのでお腹が減っただろうと、寿司の差し入れをしてくれたのです。あのときの寿司のうまさと充足感は、今でも忘れられません。

動いてみると何かが見えてきます。その最初の一歩を踏み出すべきなのが、中堅教員研修に参加されたあなた方なのです。大いに期待しています。