NITSニュース第73号 平成31年1月11日

『校内研修プログラム』を実践していくための鍵

山口大学 教授 長友義彦

次世代リーダー養成研修の最終日に「校内研修プログラムの開発」をしています。研修期間中に、SWOT分析等を用いて自校の課題を洗い出し、課題解決のための研修プログラムを作ります。作成された研修プログラムのテーマは、学校経営に関わるもの、教師の育成に関わるもの、授業改善に関わるもの等等、多岐に渡ります。演習では、この校内研修プログラムについて、グループで検討して深め、ポスターセッションを通じて校種を超えて広く交流し、ブラッシュアップします。こうした活動により、さらに実効的なプログラムになったものと思います。さて、持ち帰った校内研修プログラムを学校全体で効果的に実践するためには二つの「鍵」があると私は考えています。

まず一つ目の鍵は「共感」です。次の二つの文を読んでください。

A:主体的・対話的で深い学びがこれから必要です。アンケートによると本校の子どもは話し合いが苦手です。みなさん、一緒に話し合いのある授業づくりをしましょう。

B:主体的・対話的で深い学びがこれから必要です。私は話し合いのある授業をしたいのですが、うまくいきません。みなさんはどうですか?一緒に話し合いのある授業づくりをしませんか?

どちらも「話し合いのある授業づくり」をしようと呼び掛けています。しかしAはなんとなく「やらされる」感じがしますが、Bはなんとなく「やる気」になるのではないかと思います。そのように感じるのはBが「共感」を求めているからです。人は「理詰め」よりも「共感」で動かされると思います。多くの人を巻き込んでいくためには、多くの人に「共感」を求めることが重要です。

二つ目のポイントは、「開く」です。校内研修を教職員のみに「閉じて」いませんか?例えば、「話し合いのある授業づくり」に、教員だけで取り組んでいませんか?授業は教師と子どもで作ります。そうであれば、「話し合いのある授業づくり」に子どもも参加させてはどうでしょう。授業が始まる前に、教師は子どもたちに「今日は、話し合いのある授業に取り組むよ。いろいろ工夫するから一緒に頑張ろうね」と声をかけ、授業後には「どうだった?」と子どもに評価してもらうと研修も楽しく深まる気がします。
また、保護者や地域の方々にも研修を「開いて」はどうでしょうか。保護者や地域の方々に学校の取組を知ってもらうことで、学校に対する信頼感の増加や一層の支援を期待できると思います。ちなみに山口県の小・中学校では、コミュニティ・スクールの取組として保護者や地域の方々が授業公開・研究協議に参加する「ユニット型研修」を実施しています。研修を家庭・地域に開いて、授業改善や教員の資質向上に効果をあげています。

校内研修を効果的に実践する鍵として、「共感」と「開く」をご紹介しました。社会の状況が急激に変化する現在、学校そのものの役割も大きく変化していくと思われます。そうした中、次世代リーダーの先生方には、前例踏襲に陥ることなく、柔軟な思考で、新しい研修のスタイルを作ってほしいと願っています。