NITSニュース第70号 平成30年12月7日

新学習指導要領を見据えた言語活動の充実に向けて

文部科学省初等中等教育局 視学官 大滝一登

平成30年11月27日から30日の4日間、秋田県で独立行政法人教職員支援機構と秋田県教育委員会による主催、文部科学省の共催による「言語活動指導者養成研修」が開催されました。
「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善が改訂のキーワードの一つとされ、このテーマを校内の研究課題として掲げる学校も多い中、なぜ今更「言語活動」なのかと思われた読者もいらっしゃるかもしれません。しかし新学習指導要領においても、言語活動の充実は引き続き重要なキーワードであり続けていると言ってよいでしょう。

小学校学習指導要領総則には、学習の基盤となる資質・能力として、筆頭に「言語能力」が掲げられていますが、その言語能力の育成を図るため、「各学校において必要な言語環境を整えるとともに,国語科を要としつつ各教科等の特質に応じて,児童の言語活動を充実すること」が謳われています(第1章第3の1の(2))。言語活動は、各教科等の指導を通して育成を目指す資質・能力を身に付けるために充実を図るべき学習活動であるとともに、言語能力を育成するために必要な学習活動として位置付けられているのです。

それでは、言語活動の一層の充実を図るために、どのようなことに留意する必要があるのでしょうか。最も留意すべきことの一つは、言語活動を行うこと自体の目的化を避け、育成を目指す資質・能力との整合性を明確にすることではないでしょうか。言語活動は、あくまでも当該教科等における学習活動である以上、活動の活発さではなく、教科等の特質に応じた学習活動として効果的に機能しているかが問われなくてはなりません。

また、知識及び技能の習得だけではなく、思考力・判断力・表現力等の育成に資するものである必要もあるでしょう。思考や表現などの活動には言語が伴うため、言語活動は学習の数多くの場面で必要とされますが、単に教師の指示を追って表現したりすぐに正解にたどり着く問いに答えたりするだけでは言語活動が充実しているとは言えません。言語活動を通して子供たちがしっかり考えることができているかが重要です。さらに、各教科等の特質に応じた言語能力を育成するために適した活動であるかということも大切な視点です。

加えて、新学習指導要領を踏まえると、カリキュラム・マネジメントを踏まえて言語活動の充実を図ることがますます重要になります。冒頭に示した研修では、全国の小・中・高等学校や教育委員会等から140名を超える受講者が集まり、単に言語活動の充実に対する理解を深めるだけではなく、地域や学校全体における推進リーダーとしての力量と自覚を高めるためのプログラムに参加しました。

今後、言語活動の充実が一層図られるためには、個々に取り組むのではなく、こうした推進リーダーを中核とし、地域や学校全体における組織的な取組として、言語活動を効果的に取り入れた授業づくりを進めていくことが欠かせないでしょう。