NITSニュース第68号 平成30年11月22日

「地域とともにある学校」時代に求められるリーダーシップとは?

愛媛大学 教授 露口健司

「地域とともにある学校」とは、どのような学校でしょうか。中央研修で担当している「地域の教育活性化とスクールリーダー」(以下、本講座)では、学校・家庭・地域の連携・協働活動を通してつながり(社会関係資本/ソーシャル・キャピタル)を醸成し、子どもの成長と地域活性化を実現する学校であると仮定しています。「地域とともにある学校」の具現化のためには、学校管理職に以下の2つの使命が求められます。

第1は、校区における人々のつながりをつくる(つくり直す)ことです。校区には、主として子どもを取り巻くつながり(家庭内、子ども相互、子どもと教師、子どもと地域住民)、教師を取り巻くつながり(教師相互、教師と地域住民)、保護者を取り巻くつながり(保護者と教師、保護者相互、保護者と地域住民)があります。「つながりづくりは人づくり」と言われるように、これらの各単位のつながりは、子どもの成長(学力向上、問題行動・退学の抑制等)に対して、また、教師の職能成長や保護者の成長等に対して効果を有することが、国内外の調査研究によって明らかにされています。

つながり醸成による人的資本・経済資本・文化資本の醸成と地域活性化の方途についても、様々な分野の調査研究によって明らかにされています。本講座では、これらの各単位におけるつながりの効果や醸成方法について、国内外の多様なデータや事例をもとに探究することができます。調査研究では、客観的データを豊富に活用していますので、エビデンスに裏付けられた説得力ある講座内容となっています。

第2は、地域住民に対するリーダーシップの発揮です。学校管理職は職員の管理・統括に注力すればよいという時代は終わり、保護者に対して、そして、地域住民に対してリーダーシップを発揮すべき時代に突入しています。地位や権限で職員を動かす管理型リーダーでは、「地域とともにある学校」の具現化はできません。

地域の人々がぜひとも達成したいと思える魅力的なビジョン・戦略を設定し、地域を教育活動に巻き込むことのできる変革型リーダー。子ども・職員・保護者・地域の利益のために、「自分には何ができるのか」を問い続け、奉仕的・献身的な姿勢で支え続けるサーバントリーダー。地域における人々の幸福のために、自ら幸福のシンボルとして振る舞うウェルビーイングリーダー。
「地域とともにある学校」時代には、こうした新たなリーダーモデルが求められることとなります。本講座では、参加者がこれまでに形成してきた「持論」と、講義で学習する「理論」との対話を通して、「持論」のブラッシュアップを図る機会を設けています。また、グループ協議では、ブラッシュアップされた「持論」と「持論」をぶつけることで、さらに一段と磨きをかける機会も用意されています。

「地域とともにある学校」は100年前の米国でも、議論となっていました。これは、地域が衰退するたびに現れる、「不易」概念です。今回の困難な状況も、学校が地域の核となり、前向きに乗り切っていきましょう。