NITSニュース第64号 平成30年10月26日

「チームとしての学校」と「つかさどる」事務職員

国立教育政策研究所 総括研究官 藤原文雄

今日、家庭環境や個性の多様性を踏まえつつ全ての子供の資質・能力が向上するよう「学校組織全体の総合力の向上(機能拡大)」を図りつつ、他方では「教員の長時間勤務の是正・業務の質的転換(機能縮小)」を図るという二つの政策目標を同時に解決することが求められています。

2015(平成27)年12月にとりまとめられた中央教育審議会『チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)』は、以上の課題に対する処方箋を描いたものでした。同答申は、(1)スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなど教員以外のスタッフの配置を促進する教職員分業体制の推進、(2)多様な資源を活用し、「学校組織全体の総合力の向上」を図るマネジメント機能強化、(3)教育委員会の支援体制の強化やタイムマネジメントの推進など業務改善の推進といった処方箋を提案しました。

事務職員は、(2)マネジメント機能強化という箇所で、教員(教員出身の副校長・教頭も含め)とは異なる総務・財務等の専門性を持つ職員としての存在意義が評価され、これまで以上に権限と責任を持って学校の事務を処理することが期待されました。教員を子供・教育内容・方法という「ソフトウェアの専門家」とすれば、事務職員は教育に不可欠な施設や教材、情報や人のつながりといった有形・無形の教育資源(リソース)を調達し活用する「リソース・マネジャー」と言えるでしょう。同答申は、教員と事務職員がお互いにリスペクトしつつ、それぞれの持ち味を生かして対話し協働する姿を、次世代における学校の理想の姿(「チームとしての学校」)として提案したのです。

同答申を受けて、2017(平成29)年3月に学校教育法(同年4月から施行)が改正され、事務職員の職務規定は「従事する」から「つかさどる」(学校教育法第37条)へと変更されました。

改正に際し、文部科学省が発出した通知(28文科初第1854号)は、「学校におけるマネジメント機能を十分に発揮できるようにするため、学校組織における唯一の総務・財務等に通じる専門職である事務職員の職務を見直すことにより、管理職やほか教員との適切な業務の連携・分担の下、その専門性を生かして学校の事務を一定の責任をもって自己の担任事項として処理することとし、より主体的・積極的に校務運営に参画することを目指すものである」と説明しています。

法とは理想の姿(規範)です。法改正によって、全ての事務職員に、学校教育目標の実現を目指し、教職員と対等に対話しつつ、責任を持って担当する実務(財務、危機管理、地域連携等)を処理すること、そして、実務の中で気付いた改善点を積極的に提案していくことが求められるようになったのです。同時に、教育委員会や管理職はもとより全ての教職員にも、この理想の姿(規範)の実現が期待されるようになったのです。中央研修参加者の皆さんが法改正の持つ意義の大きさを踏まえ、各地でリーダーシップを発揮されることを期待しています。