NITSニュース第60号 平成30年9月28日

カリキュラム・マネジメント充実のためのワークショップ型研修を成功させるために

甲南女子大学 教授 村川雅弘

学習指導要領を受け止めつつも、子どもや地域の実状及び次代を生き抜く上で求められる資質・能力を踏まえて、学校園としての教育目標を設定し、その実現のための授業づくりの基本的な考え方・取り組み方の具体化・共有化を図り、日々の授業の実践を通して評価・改善を継続的に進めていくのがカリキュラム・マネジメント(以下、カリマネ)です。①教科横断的な視点での教育内容の組織的な配列、②子どもたちの実態等に基づいたPDCAサイクルの確立、③校内外の人的・物的資源の効果的活用、が3側面として示されています。

このカリマネ実現のリーダーは学校園長ですが、いかにボトムアップ的に推進していくかが肝となります。筆者は小中高の、特にこの十年あまりはカリマネの視点から学校改革や授業改善にかかわってきましたが、各学校を訪問できるのは年に1~3回程度です。筆者の力は微々たるものです。学校や授業を変えたのは紛れもなく教職員自身です。筆者が変えたとしたら、研修の方法です。まさに教師の「主体的・対話的で深い学び」と言えるワークショップ型研修を導入してきたことです。

カリマネの充実と校園内研修の工夫・改善は車の両輪と考えます。実際、講演で「カリマネ」がメインテーマの場合も「研修」の話を盛り込み、「研修」がメインテーマの場合も「カリマネ」の話を盛り込みます。子どもや地域の実態分析、教育目標の具体化・共有化、グランドデザインや年間指導計画の見直し・改善、各教科や総合的な学習の時間等の関連付け、授業研究、全国学調等各種調査データの検討、地域の素材の発掘・整理と教材化など、カリマネにかかわる各種研修において実施可能です。

ただし、ワークショップ型研修に対して大きな誤解があります。付せんを配り、「皆さんでどんどんアイデアを書いてまとめてください」で済むという安易な理解です。ワークショップ型研修こそ周到な準備が求められます。付せんや筆記具、模造紙などのグッズの調達、グループ編成と各活動の時間配分、分析方法や分析シート(例えば、「KJ法」や「ウェビング」、「指導案拡大法」や「マトリクス」、「概念化シート」など)、コメントの書き方、付せんの整理の仕方などの基本的な手続き・手順を、確定し明示することが必要です。複数のグループを動かし、各グループが限られた時間の中でその過程及び成果において満足な結果を得ることが重要です。

付せんの色にどのような意味(例えば、ブルーは「よさや成果」、イエローは「疑問や課題」、ピンクは「助言や改善策」など)を持たせるのか、どのようにコメントを書くのか、どのように付せんを整理するのかという「プロセスイメージ」と最終的にどのような成果物ができればよいのかという「ゴールイメージ」を研修の冒頭に示すことが必要です。

筆者は校内研修や教育センター等での集合研修の写真の中から当該研修と同様または近似しているテーマや展開の研修の写真をプレゼンテーションすることが多くあります。そのような適切な写真が手元にない場合はどうすればよいのでしょうか。なければ作るしかありません。校園内の仲間数人に協力してもらい、実施予定の研修を模擬的に行ってもらうのです。そして、その研修の過程と成果物を写真に収めておくのです。

①研修本番の冒頭にプレゼンテーションを行い、「プロセスイメージ」と「ゴールイメージ」を伝える。
②模擬研修を踏まえて本番の研修プランの改善を行える。
③模擬研修に協力してくれた仲間が研修本番において各グループをファシリテートしてくれる。
一石三鳥です。

初めての、色々と工夫した研修プランは「指導案」のように明文化しておきたいものです。研修時に配布し目的や展開、手順を示すことができます。研修プランの成果や課題、改善策が明確になります。

カリマネの研修にも、さらにより効果的な研修を開発していくためのPDCAサイクルの確立が求められます。

具体的な手法や多様な事例については、拙書『ワークショップ型教員研修 はじめの一歩』(教育開発研究所、2016年)を参考にしていただきたいです。