NITSニュース第30号 平成30年1月26日

食育の可能性を探る~アクティブ・ラーニングとイノベーション~

長野県短期大学 教授 笠原賀子

平成16年3月、栄養教諭制度の創設以来、はや10余年を迎えた。言うまでもなく、栄養教諭の職務は、「おいしい給食と楽しい授業」1)2)の具現化により、子どもの食と健康を支えることにある。実体験としての給食と授業で得た知識やスキルを繋げ、それらを融合して、日々の生活に生かし、自らの食を構築する力を身につけなければならない。

このことは、今まさに、新しい学習指導要領に明記された「アクティブ・ラーニング」の目指すところでもある。この「アクティブ・ラーニング」は、かつて筆者の心を惹きつけた『「授業書」方式による保健の授業』3)に通ずるところがあると考えられる。食育は、生活・文化の側面を有すると同時に、サイエンスでもある。科学的認識を形成することも大事な食育の役割である。

ところで、筆者は、昨年6月、ニュージーランドでホームステイをする機会を得た。ステイ先は、家族4人暮らし。ご主人は早朝、自分で食事を用意して出勤。高校・大学に通う2人の娘さんも、自分で朝食とランチボックスを用意して登校。簡単な朝食ではあったが、自立した食を営んでいた。学校食育でも「早ね、早おき、朝ごはん」運動を推進しているが果たしてその効果は・・・改めて考えさせられる一コマであった。

一方、近年では、給食のない夏休み・冬休みに体重の減っている児童・生徒が増加しており、給食費の無料化に取り組む自治体も出始めている。今後は、就労機会の提供等、学校給食を介したイノベーションの創出にも期待したい。学校食育は社会の縮図でもある。

参考文献