NITSニュース第28号 平成30年1月12日

創造的な思考力を促すブレインストーミング

筑波大学 教授 野津有司

行動変容を目指す健康教育では,行動に及ぼす心理社会的な影響や,適切な意思決定と行動選択について学習することが重要となる。こうした学習の指導では,一つの正解を教えることよりも,選択しうる行動が多様にあることに気付かせたり,それらの行動の結果を創造的に考えさせたりすることが重視される。ブレインストーミングは,そのための有用な指導方法の一つとして注目されている。

これは,通常数名のグループで,「Brain Storming(頭脳にあらしが吹く)」の名の如く頭の働きを活発にして課題に対して自由奔放にアイデアを出し合う集団思考の技法である。このブレインストーミングでは仲間のアイデアからも連想が起こり,一人で考えるよりも発想が豊かになり,より創造的に思考が促されることになる。また,友好的で協力的に話し合う場の雰囲気づくりにも役立つと言われている。よって,ブレインストーミングを効果的に用いた授業では,教室全体が活発な雰囲気となり,日頃おとなしい子や比較的考えることが苦手な子も引き込まれ,一人一人が主体的に考えることが容易になると期待される。

実施に当たっては,次のような簡単なルールがある。
① 自由な発想で自由に思考し,短く発言する。
② 出されたアイデアについて,その場で互いに良い悪いを言わない。
③ アイデアの実現性などは問わずに,とにかくできる限り多くの数を出す。
④ 出されたアイデアを手がかりに結合,変形,改善発展させるのもよい。

なお,ブレインストーミングが初めての教師にとっては,授業で実際に用いることは不安で,心配されよう。そこで,まずは教師同士で試して自分自身がブレインストーミングの楽しさを体験することを勧めたい。また子供たちには授業前に,考えやすいテーマでゲーム的に練習し慣れさせておくのも良いと思われる。

文献

野津有司:「授業におけるブレインストーミング」スポーツと健康1月号(文部省体育局監修),55-56,第一法規,1999.