NITSニュース第27号 平成29年12月22日

学校安全に関する研修をどう活用するか

東京学芸大学 教授 渡邉正樹

教職員支援機構では教員研修センター時代より学校安全に関する研修が続けられている。現在は学校安全指導者養成研修(旧健康教育指導者養成研修学校安全コース)として行われているほか,体力向上マネジメント指導者養成研修や管理職を対象とした研修においても学校安全が取り上げられてきた。私自身も長く講師として各研修に関わってきたが,東日本大震災が学校安全の研修の大きな転機であったと思う。

学校安全指導者養成研修では毎年テーマを変えた演習が行われているが,東日本大震災後では特に学校安全計画の立案や危機管理マニュアルの作成など,受講者が教育現場ですぐに応用できる内容が扱われてきた。また研修成果が国や自治体の防災に反映されてきた面もあったと思われる。

このように防災が特に重視された時期もあるが,研修では常に生活安全,交通安全,災害安全と学校安全領域全体を扱ってきたことは非常に意義あることである。学校安全の取組となると,ともすれば特定の領域に偏りがちであるが,実際の教育現場では様々な学校安全の課題に遭遇する。また全国の学校で普遍的に発生する事件・事故,災害もあれば,地域性が反映される課題も少なくない。研修には全国から受講者が集まることから,研修の際に他地域や他校種の受講者と情報交換することが容易であり,それは研修修了後に教育現場で学校安全や危機管理に関する対策を考える上で大いに参考となると考えられる。

教職員支援機構での研修内容を受講者が現場へ効果的に伝達していくことが学校安全の改善や充実の鍵となるわけだが,その場合たとえ学校や周辺地域で過去に発生していない事件・事故,災害であっても,今後起こらないとは限らないという視点で研修成果を現場で生かすことが重要であろう。過去に発生事例がないということは,決して安全を保障することにはならないのである。