NITSニュース第22号 平成29年11月17日

学校における人権教育の改善・充実について

上越教育大学 理事兼副学長 梅野正信

担当される研修の冒頭に、次の三つのポイントを話されては如何でしょうか。

第一は、教育の課題は人権教育の課題だという点です。G7教育大臣会合「倉敷宣言」(平成28年5月)のキーワードを整理すると、抽出された教育的課題のほとんどが、人権をめぐる課題であることに気づかされます。教育的に必須とされる対応・方策のおおよそも、人権教育の推進に関わるものなのです。(【】は倉敷宣言の文節番号)
【2】貧困、格差、紛争、テロリズム、難民、移民【3】他者理解、マイノリティの人権の尊重、【4】自他の生命の尊重、自由、民主主義、多元的共存、寛容、法の支配、人権の尊重、社会的包摂、非差別、ジェンダー平等、市民教育、【7】暴力、人種差別、【8】文化間の対話、相互理解、他者への思いやり、ホスピタリティの精神、 【10】コミュニケーション能力、コラボレーション能力、創造性、批判的思考、問題解決力、困難から立ち直る力、【11】異なる考え方や価値観に対する寛容な精神、多文化共生社会、【14】多様性、多様な人々の包摂と協働、異なる文化の人々と協働する力、【15】個別性や多様性の尊重、排他、疎外、不平等、社会的経済的に不利な立場の子ども、 特別な支援を要する子ども、虐待やいじめに苦しむ子ども、不登校の生徒、NEET、性的指向や性自認を理由とした差別に苦しむ子ども、【16】性別に関する固定観念の払拭、【20】社会的包摂への貢献【39】脆弱で不利な状況にある人々(特に女児・女性)ジェンダーに基づく暴力や差別のない、安全でインクルーシブで効果的な学習環境、【42】人間の尊厳の保持。
国際社会の課題、教育の課題は、その多くが人権教育の課題であることがわかります。

第二は、人権教育は学校教育のさまざまな教育活動の全体で行うという点です。学校教育では、「生きる力」を育む教育活動の基盤として、各教科、道徳、特別活動及び総合的な学習の時間、教科外活動等、教育活動全体を通じて推進することが期待されている。(第3次とりまとめ・4頁)学習なのです。

第三は、人権教育は、人権課題に対する普遍的、個別的知識はもちろんですが、人権感覚をもとにした、良識的な行為規範を醸成する教育だという点です。そのためには、参加型学習が不可欠ですが、協力的学習、体験的学習、参加型学習による「他の人の立場に立って」「共感的に理解する力」「伝え合い、わかり合うためのコミュニケーション」「人間関係を調整する能力」「自他の要求を共に満たせる解決方法」(第3次とりまとめ・2008年)などは、まさに新しい学習指導要領の特色そのものでもあります。

人権教育は学校づくり、学級づくりに不可欠である教育であるとともに、新しい学習指導要領を推進する教育としても大きな意義を持っています。