NITSニュース第20号 平成29年11月2日

リーガルマインドを生かした喫緊の課題への対応について

高崎経済大学 講師 飯野眞幸

教職員支援機構の前身である教員研修センター時代から「リスクマネジメント(危機管理)」の講義を担当してきましたが、私の講義の特徴は、発生した危機をどう乗り切るかという視点ではなく、危機を発生させないために何が必要かという視点に立脚しています。

私は学校現場を経て教育行政に長く関わってきましたが、約30年前教育行政に入った時にある弁護士の言われた「学校はスキ(隙)だらけ。学校ほど突っつきやすいところはない。」という言葉が私のリスクマネジメントの原点になっています。現場を離れ、教育行政から諸問題の対応に当たる中でこの言葉を実感しました。そういう状況をどうしたら改善できるかということを考えた時、その一つとして教職員に法的視点(リーガルマインド)を持ってもらうことが不可欠という結論に達しました。それ故、私の講義のサブタイトルは「リーガルマインドと危機管理」となっています。弁護士と同じような法的知識を持つことを求めているのではなく、学校教育を支えている法令についてもっと理解し、行動に反映させてほしいということを強調しています。

滋賀県大津市で発生した中学生の自殺事件を契機に「いじめ防止対策推進法」が成立し3年が経過しましたが、残念ながら悲劇の連鎖が続いています。この法律には、子どもたちへはいじめの禁止、保護者には規範意識の醸成、行政や学校関係者にはいじめの防止・早期発見・迅速適切な対応等が規定され、実に重い法律です。にも関わらずこの法律の現場での理解と利用が進んでいません。決して長く、難解な法律ではありません。

私は、いじめは生徒指導上の問題ではなく、命に関わる問題と捉えています。将来ある子どもたちが自ら命を絶つというような悲劇を絶対に防ぐためにも是非この法律を読み、対策を立ててほしいと思っています。そのような取組が正にリーガルマインド的発想です。