NITSニュース第16号 平成29年10月6日

いじめの未然防止のための教師文化の創造

愛媛大学 教授 平松義樹

学校は何のためにあるか?子どものためにある。子どもの幸せのために存在する。子どもの幸せのためとは何か?それは、子どもの今生活している幸せのためばかりではない。子どもが将来生きていくための幸せを保証する。つまり、子どもの未来保証こそ、学校存在の大原則なのである。

学校には、制度文化、教師文化、子ども文化、校風文化がある。これらの文化が複雑に絡みながら有機的に機能しているとき、いじめが起きにくい学校を創造することができる。いじめが起きる学校は、これら4つの文化が子どもを育てる「磁場」として機能していないことを意味している。

しかし、最近は消費社会や情報化社会等の影響を受け、学校の「磁場」に入りきれない子が出現しており、このことも看過できない。

学校の日々の教育活動が、子どもが育つ「磁場」として機能するためには、何を差し置いても質の良い「教師文化」の創造が急務である。質の良い「教師文化」とは「子どもの心に迫る」ことのできる教師集団である。「子どもの心に迫る」とは、子どもに近づき、子どもを理解すると同時に、子どもを高いレベルに引き上げることのできる教師のことを意味する。 「叱るだけでない厳しさと、甘やかせるだけでない優しさ」を兼ね備えた教師である。苦しいけれど楽しい、楽しいけれど苦しい。「苦っ楽しい学校」を創造する意欲に満ちた教師集団の熱意ある営みこそ、子どもにとって学校は魅力ある「磁場」となり得るのである。「教育は畢竟、教師論に帰着する」。

日常の教育活動を見直して、率直に意見を言い合い、協働し、試み、真摯に省察する「チーミング教育」を実践する教師集団こそが、いじめを未然に防止することができる。