NITSニュース第15号 平成29年9月29日

新しい学習指導要領で期待される学びと育成を目指す資質・能力の実体

國學院大學 教授 田村学

「主体的・対話的で深い学び」が期待されている。そうした学びこそが,実際の社会で活用できる資質・能力を育成していく。その資質・能力の実体については、以下のように考えることができる。

「知識及び技能」については,各教科等で習得する「知識及び技能」が相互に関連付けられ,社会の中で生きて働くものとして形成されるようにすることが大切である。具体的な事実に関する知識,個別的な手順の実行に関する技能に加えて,複数の事実に関する知識や手順に関する技能が相互に関連付けられ,統合されることによって生成される概念的知識などが大切である。

「思考力,判断力,表現力等」は,「知識及び技能」が異なる場面において駆動するものと捉えることができる。身に付けた「知識及び技能」の中から,当面する課題の解決に必要なものを選択し,状況に応じて適用したり,複数の「知識及び技能」を組み合わせたりして,適切に活用できるようになっていくことを「思考力、判断力、表現力等」と考えることができる。教科等横断的な情報活用能力や問題発見・解決能力も,それらを構成している個別の「知識及び技能」が,場面や状況に応じて選択されたり,適用されたり,組み合わせられたりして適切に活用できるようになっていくことが,それら教科等横断的で汎用的な力の実際と考えることができる。

「思考力,判断力,表現力等」は,「知識及び技能」と別に存在しているものではない。習得したときと異なる場面や状況においても,「知識及び技能」が駆動するようになることが大切であり、身に付けた「知識及び技能」が,様々な課題の解決において「活用・発揮」され,異なる状況において駆動するようになることこそが,個別の「知識及び技能」の習得という状態を超えた,「思考力・判断力・表現力等」の育成という状態と考えることができる。

「学びに向かう力・人間性等」についても,よりよい生活や社会の創造に向けて,自他を尊重すること,自ら取り組んだり異なる他者と力を合わせたりすること,社会に寄与し貢献することなどの適正かつ好ましい態度として「知識及び技能」が駆動することと考えることができる。「知識及び技能」が構造化されたり,身体化されたりして高度化し,適正な態度や汎用的な能力として駆動する状態となり,身に付いていくことが重要なのである。