NITSニュース第14号 平成29年9月22日

「特別の教科 道徳」の「考え、議論する道徳」の実現に向けて

文部科学省 教科調査官 浅見哲也

新教育課程の主旨を先取りして、小学校は平成30年度、中学校は平成31年度から、特別の教科である道徳(以下、道徳科という。)が全面実施されます。道徳科の授業では、教科書が導入され、継続的に評価も行っていくことになります。

道徳科の目標は、道徳性を養うために、内面的資質である道徳的判断力、道徳的心情、道徳的実践意欲と態度を育成することです。そのための学習指導過程や指導方法の工夫は多様で、例えば、登場人物への自我関与が中心の学習、問題解決的な学習、道徳的行為に関する体験的な学習等などが考えられますが、目指すべき学習の姿は、道徳科の目標の中に、「道徳的諸価値の理解を基に、物事を(広い視野から)多面的・多角的に考え、自己の(人間としての)生き方について考えを深める学習 ※( )は中学校の表記」と示されています。 この学習が、答えが一つではない道徳的な課題を一人一人の児童生徒が自分自身の問題と捉え、向き合う「考え、議論する道徳」の実現に向かうことになります。そして、これまでの道徳の時間の課題として上げられた、読み物教材の登場人物の心情理解のみに終始する指導や望ましいと分かっていることを言わせたり書かせたりすることに終始する指導を改善するためにも、特に重視すべきことは、道徳的価値を自分自身との関わりで考えることや物事を多面的・多角的に考えるということです。

このような授業を構想するためにも参考にしていただきたいのが、文部科学省から配信されている「道徳教育アーカイブ」です。こちらには、各都道府県の道徳教育に関する様々な取組が掲載されており、また、工夫された小・中学校の授業を映像で見ることができます。授業の意図も解説されており、家庭でも研修できるよい機会となります。是非、御活用いただき、授業のさらなる質の向上に努めていただければと思います。