NITSニュース第7号 平成29年8月4日

組織マネジメントの理解があらゆる研修の基礎

独立行政法人教職員支援機構 理事長 髙岡信也

前回(NITSニュース第6号),最後に,組織マネジメントとカリキュラム・マネジメントの相互関係に触れました。そこでは,二つのマネジメント概念を広狭あるいは上下の関係として考えてみましたが,これからしばらくは,組織マネジメント概念にこだわって,多面的にかつ連載読み物風に書き進んでみようと思います。

学校組織マネジメント研修のテーマ・目的は,校長をトップリーダーとする組織体制や方針の構築と確認,構成員全体への周知と議論の場の設定そして触発,日常的な実践活動への具体的な展開等,学校経営の多様な側面についてその全体を理解し,かつ日常の教育実践が向かうべき具体的方向を明確に意識化すること。言い換えれば,学校の改善に向けた理論的,実践的な知見の獲得,考え行動するための武器の獲得ということです。

学校は,子供たちの教育をより良く,効率的かつ効果的に行うことを目的とした機関であり組織です。その目的の達成のために,学校には「ヒト,モノ,コト,カネ」が装備されており,これらの資源の量と質を確認しつつ,これらをどう使って,どのような経路を通って目的を達成するかが問われるのです。学校組織マネジメントとは,学校の本質,最も根本的な目的を実現する営みの総体のことだといっても良いでしょう。「そんな当たり前のことを・・・?」と思われるかもしれませんが,実はそうでもないようです。例えば,一人ひとりの先生方の最大の関心事は,「担任する学級の子供たち」であり「担当する教科の授業と評価」ではありませんか?「それでは困る」と言う訳ではありませんが,少なくとも,学校のマネジメントという課題は何番目ですか?と改めて問わなければなりません。

「学校のマネジメントは校長の仕事」という誤解もあります。確かに,組織のリーダーである校長のマネジメント能力に負う側面が多いとはいえ,組織が向かうべき方向や業務上の優先課題の設定等,構成員全員のコンセンサスに基づかなければ成立しない事柄がたくさんあります。採用から数年の若手といえども,組織マネジメントに関する基礎的理解は必要です。もちろん教職経験10年以上のミドルリーダー層や主幹教諭,指導教諭,教頭・副校長等の管理職は,組織としての学校の実質的担い手でもあります。

そう考えると,教員研修のテーマとしての組織マネジメント論は,すべての年齢層,職階に属する教員にとって,それぞれの現在の職制や責務に応じて繰り返し学び続けるべきものだと言えるのではないでしょうか。