NITSニュース第5号 平成29年7月21日

教職課程コアカリキュラムの運用が始まります

独立行政法人教職員支援機構 理事長 髙岡信也

検討が進められていた「教職課程コアカリキュラム」が公表され、パブリックコメントもまとまりました。教員免許の取得に必要な科目が含むべき内容について、一定の基準を設けて、大学に置かれる教職課程の質を確保しようという試みです。

これを、先生になるために必要な知識・技能の基準だと考えれば、これまでそういうものがなかったことの方が不思議なのですが、なかったものは仕方がない、だから作ろうと考えて、全国から数十名の研究者や実践家が集まって検討した成果です。(中教審教員養成部会の専門委員会に位置付けられています。)

およそ高度専門職と認められる職業には、少なくとも高等教育レベルかそれ以上の「高度な養成システム」が不可欠。教員もまた、戦後すぐに「大学における養成の原則」と「開放性の原則(一定の基準さえ満たせば、大学であればどこでも教員免許を出せる仕組み)」が確立され、今に至っている、誰もが知っていることです。

しかし、他の専門職のように「大学で何を学ぶか」についての共通認識は、70年間にわたって一度も形成されることはありませんでした。授業科目の名前は同じでも、教えられている内容は大学によってばらばら…。いや、担当する大学教員ごとに違っていました。それを不思議だと、あるいはおかしいことだと誰も考えない。私などは、戦後教育七不思議なるものがもしあれば、その筆頭ではないかと思っていました。こちらは、そう誰でも知っていることではないかもしれません。

さて、このコアカリキュラムの提案の全貌が見え始めた辺りから関係の学会や団体の動きが活発になって来ました。賛成、反対の論が展開されているようですが、再課程認定の実務の中で、実際にどの程度の拘束力を持つものなのか、この点が関係者の関心の的なのでしょう。

いずれにしても、コアカリキュラムの提示が、わが国の教員養成の大きな画期になることは間違いありません。歴史的転換点というと少し大袈裟ですが、開放性教員養成制度の運用原則に、ようやく「水準と質の確保」の観点が入ったということでしょう。ようやく到達した「とばぐち」、先ずは穏やかで、しなやかな導入を期待したいものです。

一方、大学には、自らの教職課程カリキュラムを、ここで一度総点検することを求めたいと思います。教員に必要な基本的資質とは何か、わが大学が育てようとする教員像に照らして、教育内容をどう改善していくか、教員養成教育の改革に果敢に取り組む学内論議に期待したいと思います。