NITSニュース第3号 平成29年7月7日

物事の判断にあたって

独立行政法人教職員支援機構 次世代型教育推進センター 上席フェロー 大杉昭英

本年度4月に教職員支援機構次世代型教育推進センターの上席フェローとして着任しました大杉昭英です。教育改革が進む現在,よりよい学校づくりに貢献できればと思います。

さて,これまで様々な職場等で上司や先達から教えていただいたことは沢山ありますが,その中で,マネジメントに関わって長く心に残っているものが三つあります。それらは,何か問題にぶつかったときや,判断に迷うことがあると思い起こすものです。

一つは「事の大小,軽重,緩急を見極めよ」です。教育センターに勤めていたとき,当時の所長よりいただいた言葉です。問題が生じたとき,それは大きな問題になっていくか,それほどのものではないか,重い問題を孕んでいるか,そうではないか,急ぎ解決しなければならないか,まだ余裕をもって解決してよいか,といった視点でプライオリティを考えることの大切さを学びました。

一つは「それで,だから,結論は?」です。これは職場ではなく大学のゼミで恩師から指導されたときの言葉です。ゼミで発表を行うと,それはなぜそうなるのか,そう言える根拠は何か,結局あなたの結論は何か,と常に問われました。自分の結論が定まっていないと回答がしどろもどろになりました。結論を明確にし,その正当性・妥当性の根拠を明らかにして論理的に説明することの大事さを学びました。近年,OECDのPISA調査で好成績をあげるフィンランドでは,これとよく似た指導を行っていると書籍で読んだことがあります。

一つは「説得する力と納得したら受け入れる寛容さ」です。これは法務省の法教育研究会で,ある研究者が述べた言葉です。様々な問題が起こり論争が生じたときに,まずは自分の意見を相手に伝え説得する説明力が必要です。逆に,相手の説得が納得できるものであるならば,それを受け入れる心の広さが必要ということです。前の二つの言葉は,自分自身が判断するときにつきつめておくものですが,最後の言葉は,他者との関係性を伴うコミュニケーション能力にも関わります。