NITSニュース第239号 令和6年12月20日

教科における観点別評価の意義と進め方

京都大学大学院教育学研究科 教授 西岡加名恵

2001年改訂指導要録において「目標に準拠した評価」が導入されてから、早くも20年余りが過ぎました。学校現場において「目標に準拠した評価」は既に定着はしたものの、「観点別評価をどのように進めたらよいのかがよく分からない」という悩みの声を聞くことが少なくありません。

そもそも、なぜ「観点別評価」なのでしょうか。中央教育審議会「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(2016年)では、「資質・能力のバランスのとれた学習評価を行っていくためには、……論述やレポートの作成、発表、グループでの話合い、作品の制作等といった多様な活動に取り組ませるパフォーマンス評価などを取り入れ、ペーパーテストの結果にとどまらない、多面的・多角的な評価を行っていくことが必要である」と述べられています。つまり、観点別評価については、「資質・能力」をバランスよく育成するために、「多面的・多角的な評価」を行うものと言えます。

このことの意味を理解するには、運転免許を取得する場合をイメージしていただくと分かりやすいことでしょう。運転免許を取るには、運転に関する幅広い知識が身についているかが客観テストで確認されます。また、教習所のコースでは、右折・左折といった個々の技能が発揮できるかどうかが確かめられます(いわば、実技テストです)。ある程度、知識や技能が身についてくると、路上教習・路上検定へと進みます。そこでは、状況において、必要な知識や技能を引き出しつつ、総合して使いこなせるかどうか(適切に思考・判断し、表現できるか)が確かめられます。これが、パフォーマンス評価です。

ここで、運転免許を取るのに、パフォーマンス評価が要らないという方はおられないでしょう。この例が示すように、バランスよく「資質・能力」を育成しようと思うと――つまり、「知識・技能」の習得だけでなく、それらを活用して「思考・判断・表現」する力、適切に運転する「態度」までを育成しようとすれば――多彩な評価方法を組み合わせて用いる必要があるのです。

なお、広義のパフォーマンス評価は、知識や技能を使いこなすことを求めるような評価方法の総称です(筆記テストにおける自由記述式問題や実技テスト、観察による評価なども含まれます)。答申では、パフォーマンス評価として、主に「パフォーマンス課題」(様々な知識や技能を総合して使いこなすことを求めるような複雑な課題)が想定されていることがうかがわれます。

以上を踏まえて、「観点別評価」を実践する際には、各観点に対応して、どのような評価方法を用いるのかを明確にすることをお勧めします。たとえば、「知識・技能」の観点については筆記テストや実技テストで評価する、「思考・判断・表現」や「主体的に学習に取り組む態度」の観点についてはパフォーマンス課題で評価するといった整理が考えられます。

指導要録に関していえば、年度末に3観点の評価がそろっていればいいので、年間を通して、どの内容に対して、どの評価方法を用いて成績づけをするのかを考えるとよいでしょう。国立教育政策研究所「学習評価の在り方ハンドブック」(2019年)においても、観点別評価の評価時期については、決して1回の授業で3つの観点すべてを評価しなければならないわけではなく、「原則として単元や題材などのまとまりごとに」評価をする、「複数の単元や題材などにわたって長期的な視点で評価すること」も可能と明記されていることに、注目しておきたいと思います。