NITSニュース第234号 令和6年7月22日

組織改革・働き方改革について

東北大学大学院教育学研究科 教授 青木栄一

筆者も委員として参画している中教審「令和の特別部会(質の高い教師の確保特別部会)」が「審議のまとめ」を5月末に公表しました。本コラムのテーマにも関連しますが、「チーム学校の考え方の下、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成が必要」として、教師を取り巻く環境整備を政策・制度レベルで提言しました。

それは大きく分けて3つであり、筆者は「三位一体」と表現しています。①学校における働き方改革の更なる加速化、②学校の指導・運営体制の充実、③教師の処遇改善、の3つを一体的・総合的に推進することが必要とされています。

本コラムのテーマに関連した施策としては、支援スタッフの配置拡充、ICTによる業務効率化、労働安全衛生管理体制の整備、主任層を想定した「新たな職」の創設、副校長・教頭マネジメント支援員の配置充実があります。つまり、この審議のまとめからは、文部科学省は政策・制度レベルでしっかり予算を確保しボールを都道府県・政令市教育委員会に投げるので、あとは学校レベルのマネジメントをしっかりしてください、というエールが読み取れます。

ところで、どうしてマネジメントが大切なのでしょうか。この審議のまとめの際に主に参照されたのが2022年に実施された教員勤務実態調査で、この調査結果からマネジメントの必要性が浮かんできました。例えば、全国の小中学校全体平均でみると2016年と比較して2022年の在校等時間が30分短くなりましたが、依然として超長時間勤務の教員が存在します。学校単位の集計でも学校内や学校間の在校等時間のばらつきは減少しましたが、長時間勤務の学校もまだ存在します。つまり、全体的には働き方改革が進んでいる中で、旧態依然とした働き方の教員や学校が目立つことがあります。さらに、マネジメント不在の学校も一部存在します。ここに学校単位のマネジメントの重要性があります。

教員勤務実態調査から得られた知見によれば、「在校等時間の学校平均値が長いほど、その学校内における在校等時間の長い教諭の割合が高まるが、学校平均値が短い学校でも在校等時間の長い教諭が一定割合存在」します。つまり、平均的に忙しい学校では多くの教員が忙しいですが、それでも長時間勤務ではない教員もいます。一方、平均的にあまり忙しくない学校でもなぜか長時間勤務の教員が存在するのです。これがマネジメントを必要とする背景です。

さらに、「所属する学校においてPDCA等の働き方改革に関する取組が行われているほど、教諭の時間管理意識が高い」「管理職がリーダーシップを発揮し働き方改革を進めていると認識している教諭ほど、時間管理意識が高い」「時間管理意識が高い教諭ほど、在校等時間が短い」という結果も得られています。つまり、管理職の存在が時間管理に大きく影響することが示されています。

そもそも、学校管理職が直面している働き方改革の世界はどういうものでしょうか。在校等時間や「残業時間」はマイナスの値をとらないため、超長時間勤務者が平均値を引き上げます。学校管理職が今日からでもできることは、まず自らリーダーシップを発揮し、制度的に学校の働き方改革を進めることです。そして、必ず校内に存在する超長時間勤務者に対して個別に対応し、躊躇せず介入することが求められます。単なる賞賛や励ましではなく、即座に業務の再分配を行い、超長時間勤務状態から教員を解放することが重要です。教員の健康と安全を確保する責務が管理職にはあります。

付記

本稿は敬体での執筆依頼をいただいていましたが、筆者はうっかり常体で書いてしまいました。そのためChatGPTに敬体へ変換してもらいました。その後筆者が目視して提出したものがこの文章です。働き方改革のヒントとなれば幸いです。

参考文献