NITSニュース第227号 令和6年1月12日

「体力向上」 ~体を動かすことを楽しみましょう~

スポーツ庁政策課 教科調査官 塩見英樹

私の新規採用教員としてのスタートは、小学校1年生の担任でした。クラスの子供たちの多くは、体を動かすことが大好きでした。休み時間や放課後には、いつも子供たちと運動場で遊んでいました。

ある時、一輪車で遊ぶことが子供たちの中でブームになりました。「塩見先生、一緒に一輪車に乗って遊ぼう!」子供たちは目を輝かせて誘ってきました。大学時代、運動部に所属していた私は、「一輪車なんて、すぐに乗れるようになるだろう」と心の中で高を括っていました。

しかし、全く前に進むことができません。バランスをとることすらできません。「こんなはずではない」と、自分を叱咤激励するのですが、何の効果もありませんでした。一方、1年生の子供たちは、あれよあれよという間に乗りこなしていきます。結局、子供たちは楽しく一輪車に乗って遊び、私は乗りこなすことができないままで終わってしまいました。

楽しそうに一輪車で遊んでいる子供たちの中に、運動の苦手な子供(A児)がいました。入学前から外で遊ぶことを嫌い、室内で過ごすことが多かった子供でした。保護者の方もその点を心配されていました。

しかし、友達の「一緒にやろう!」という声掛けと、「楽しそう!」というA児の興味が重なり、晴れた日は毎日外に出て、雨の日も渡り廊下の手すりにつかまりながら夢中になって遊ぶ中で、乗りこなすことができるようになりました。その成功体験が更なる意欲となり、ほかの遊びでも、外で体を動かして遊ぶようになっていきました。改めて、友達の存在や内発的に動機付けること、そして成功体験が大切であることを実感しました。

一方で、仮定の話とはなってしまうのですが、私が子供の頃に一輪車に出合っていたらどうなっていたのだろうか?と想像してみました。子供の頃にこつをつかんでいたならば、多分、多少のブランクはあったとしても、乗ることはできたのではないかと思います。事実、子供の頃に慣れ親しんだ竹馬は、10年近く乗っていなかったけれど、大人になってもすぐに勘を取り戻し、乗ることができました。子供の頃の経験は、大人になってからの習得よりもきっと早いのだろうと自分自身の体験で実感しました。

令和4年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果を示したスポーツ庁のホームページに、室伏スポーツ庁長官からのビデオメッセージがあります。その中で、運動をする子供と運動をしない子供との二極化があることを指摘した上で、幼少期に体を動かすことの大切さについて以下のように伝えています(抜粋)。

小さいうちから様々な体の機能の発達が始まります。小さい頃から、走ったり跳んだり転がったり、多様な動きにより、適度に体に刺激を与えることが重要です。子供の時期からよく遊びよく体を動かすなど、様々な体の動かし方を身に付けるなどすることはとても大切です。

まずは、子供が「やってみたい」と思えるような様々な出合いをさせてあげたいですね。そして、特に運動が苦手な子供には、そっと後押しをしてあげる先生や友達の支えの手が、その後の豊かなスポーツライフを実現するきっかけの一つとなるのではないでしょうか。
体を動かすことを楽しみましょう。