NITSニュース第222号 令和5年10月20日

学校における食育の推進と役割

文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課 食育調査官 山上望

食育については食育基本法(平成17年6月17日成立)に基づき、すべての国民が心身の健康を確保し、生涯にわたって生き生きと暮らすことができるように国民運動の一環として取組が推進されています。食育基本法に基づく食育推進会議において、食育推進基本計画(現行:第4次計画)が策定され、食育に関わる基本的な方針等(重点事項)が定められています。この他「食に関する指導の充実」や「学校給食の充実」など学校における施策等も示されているため、施策を踏まえた取組が各学校で実施されていることと思います。

また、栄養教諭制度(平成17年4月)に基づき、学校教育法に規定されている「児童の栄養の指導及び管理をつかさどる」職務を有する栄養教諭の配置(6,843名 令和4年5月1日現在)も進められている状況です。

子供に対する食育は、言うまでもなく生涯にわたって健やかに生きるための基礎を培うために必要であり、健康な心身を育み、将来の食習慣の形成に大きな影響を及ぼす極めて重要なものです。そのため子供に対する食育は家庭を中心としながら、学び得た知識・情報に基づき、自ら判断し、食生活をコントロールできるように学校においても積極的に取り組む必要があります。

また、学校における食育は教育活動全体を通して推進していくものであるため、学校の教職員全体が「食育の大切さ」等について共通の認識を持つことが不可欠となります。このことは学校が一つの組織体(チーム)として連携・協力し、専門性を有する栄養教諭を中核として食に関する指導を実施していくために最も重要なことです。さらに学校での食育を組織的、計画的に推進していくためには、各学校の実態に応じた「食に関する指導の全体計画」を作成し、計画に基づいた取組が大切です。そのため全体計画の作成時に立てた「食に関する指導の目標」の達成に向けて、「いつ」「誰が」「どのように」指導するのかを明確に示しておかなければなりません。

学校における食に関する指導については、【各教科等における食に関する指導】【給食の時間における食に関する指導】【個別的な相談指導】の3つの内容に体系化されています。【各教科等における食に関する指導】は、学習指導要領に基づき各教科等のそれぞれの特質に応じて適切に行うことが重要であり、当該教科の目標がよりよく達成されることを第一義的に考え、その過程に「食育の視点」を位置付け、食育の充実へとつなげていかなければなりません。

【給食の時間における食に関する指導】は、給食の準備から片付けまでの一連の指導を通して、正しい手洗いや食事のマナー等の体得を目指す「給食指導」と、学校給食の献立を通じて食品の産地や栄養的な特徴、教科等で取り上げられた食品や学習内容などについて学ぶ「食に関する指導」に整理されており、日々の継続した取組が重要です。

【個別的な相談指導】は、授業や学級活動等における全体指導では解決できない健康に関係した個別性の高い課題の改善を促すことが目的であり、成長の著しい子供たちが健康に過ごし、将来に向けて望ましい食生活を形成していくために非常に重要な指導であると言えます。そのため専門性を有する栄養教諭等による指導が求められます。想定される指導内容としては、偏食、肥満・やせ傾向、食物アレルギー、スポーツ、食行動などが考えられます。

ここまで学校における食育推進の目的や取組内容等について記載してきましたが、近年、健康課題のある子供が増えてきている状況を踏まえると、学校において食育の推進がさらに充実するように社会全体で対応を検討する必要があると考えています。食育は成果の見えにくい取組ですが、子供たちが生涯にわたり心身ともに健やかに生きていくために教育者として「情熱」と「正しい信念」を持って、みんなで食育を「やり続けて」いただくよう、切に願っています。