NITSニュース第214号 令和5年6月23日

学習指導要領と教員研修

文部科学省初等中等教育局教育課程課 教育課程企画室長 石田有記

小学校、中学校、高等学校の学習指導要領を担当しています。
標記のテーマで執筆のご依頼をいただいた時、まず頭に浮かんだのは「小学校学習指導要領」の解説総則編の次の一節でした。

小学校は義務教育であり、また、公の性質を有する(教育基本法第6条第1項)ものであるから、全国的に一定の教育水準を確保し、全国どこにおいても同水準の教育を受けることのできる機会を国民に保障することが要請される。このため、小学校教育の目的や目標を達成するために各学校において編成、実施される教育課程について、国として一定の基準を設けて、ある限度において国全体としての統一性を保つことが必要となる。
一方、教育は、その本質からして児童の心身の発達の段階や特性及び地域や学校の実態に応じて効果的に行われることが大切であり、また、各学校において教育活動を効果的に展開するためには、学校や教師の創意工夫に負うところが大きい。
このような観点から、学習指導要領は、法規としての性格を有するものとして、教育の内容等について必要かつ合理的な事項を大綱的に示しており、各学校における指導の具体化については、学校や教師の裁量に基づく多様な創意工夫を前提としている。
(『小学校学習指導要領解説 総則編』 P.13)※中学校、高等学校も同旨

このように学校教育には、全国的に一定の教育水準を確保することと、目の前の子供や地域の実態に応じることの両者をつなぐ役割が求められており、学校や教師の方々の創意工夫が欠かせません。そして、教師の皆様の日々の教育活動を支えるものとして、本稿のテーマである教員研修が位置付くのだと思います。
その意味では(少し大仰な言い方になりますが)全国的な教育水準の確保のために定められる学習指導要領と、その実現に向けた各学校における取組との間を取り結び、公教育の質を保障する重要な制度として教員研修制度が位置付くと言えるのではないかと考えています。
ところで教員研修については、教育公務員特例法に定めがあります。教育公務員特例法第21条第1項に「教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない」とあります。教員研修が教育公務員としての職務の遂行に必要不可欠であることが、法令上も明示されている点は大変意義深いと思います。
加えて、我々教育行政に携わるものにとって重要な規定は同法第22条第1項「教育公務員には、研修を受ける機会が与えられなければならない。」です。教育公務員としての職責の遂行に研究と修養に努めるよう求めるのであれば、研修を受ける機会を保障する責務が教育行政側にもあること、これも併せて明記されています。

今般、原稿を寄稿している教職員支援機構(NITS)は、教員研修に係る我が国唯一のナショナルセンターであり、そのミッションは「教育の直接の担い手である教員の資質能力向上」にあります。同機構では「校内研修シリーズ」として校内研修で活用可能な動画を掲載しております。同シリーズでは、学習指導要領の動画も多く掲載をいただいており、文部科学省の視学官・教科調査官による解説をご覧いただくことができます。是非、御活用くださいますようお願いします。