NITSニュース第213号 令和5年6月9日

“なりゆき任せ”の話合いにさようなら ~ファシリテーションの技術を活用する!~

教育ファシリテーション研究所 主任研究員 三田地真実

学校現場のみならず、組織という組織でこの「話合い」「会議」という活動は、必ず行われているものです。こういう会議について、あちらこちらで耳にするのが残念なことに、「今日の会議、何のためにやっていたのか分からない」「集まる意味がない」「何も決まらない」「時間が取られるばかり」といった不満・不平です。これは、ビジネスの世界においても全く同じ状況です。

どうしてこういう状況になってしまうのでしょうか?それはズバリ「なりゆき任せ」に話合いを進めているからなのです。「え、なりゆき任せって?」と思われた皆様は、是非一度、ご自身が「あれはダメな会議だ」と思われている会議を録音して聞き直してみられるとよいでしょう。いかにお互いの話を聴いていないか、さらには発言内容が分かりにくいか、はたまた話がそれているかに気づかれることでしょう。録音した内容を改めて聞き返してみると、そういう違和感に気づきやすいのですが、会議に参加している最中は、そんな風になっているとはなかなか気づかず、その場その場の対応―これこそがなりゆき任せの対応―になって話が進んでしまうのです。

ファシリテーションとは、そういうなりゆき任せの会議の進み具合をきちんと整えながら進める技術のことです。「促進する、容易にする」という意味の“facilitate”の名詞形で、ファシリテーションを行う人のことを「ファシリテーター」と言います。

ファシリテーターという言葉も最近は教育現場でも用いられるようになっていますが、これも「司会」とどう違うの?という疑問を持たれている方がいらっしゃるかもしれません。司会は議事を決められた通りに進めていきますが、ファシリテーターは、「その話合いがどのように進んでいるか、そのプロセス(流れ)をしっかり観察しながら、今どのような問い掛け、活動を提示すれば、その場が“意味あるもの”になるかを瞬時、瞬時に判断しながら会を進める」という、外からはあまり明確には見えないけれども、とてもアクティブな動きをずっとしながら話合いを進めているのです。

ファシリテーションというと、研修などでもよく見られる方法は、付箋紙を使って模造紙に貼る、みたいなやり方ですが、付箋紙と模造紙を使えば「ファシリテーションをやっている」ことにはなりませんので、ここは気を付けなければなりません。付箋紙を使うのは何のためか、それを使うのに適切な状況なのか(模造紙も同じです)、そこまでしっかり考えて付箋紙や模造紙を導入しないと、ただ道具を使っているだけで、会議を活性化することに結び付かないことがあるからです。 

こうならないために、ファシリテーションに必要な一番の基礎スキルは、実は「観察力」です。これは書籍では扱いにくいものですが、先生方が授業を行うときにも必須の力です。ということは、先生方はすでにこの観察力を日々の授業で鍛えていらっしゃる訳ですから、この場を見る力を今度は会議や話合いにも応用してみられると意味ある場に変容するのではないかと思います。今は様々な書籍で、ファシリテーションのスキルについては紹介されていますので、会議をよく観察しながら、それらを是非活用してみてください!

参考文献