NITSニュース第203号 令和4年11月25日

外国人児童生徒等への日本語指導

三重大学 准教授 服部明子

日本社会の変化により、日本語指導が必要な児童生徒数はこの10年間で増え続けています。文部科学省「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(令和3年度)」では、日本語指導が必要な児童生徒数は58,307人(外国籍の児童生徒数:47,619人、日本国籍の児童生徒数:10,688人)となり、令和2年度の前回調査よりも7,181 人増加しています。

10月3日から6日にかけ、独立行政法人教職員支援機構(NITS)・三重県教育委員会主催「令和4年度外国人児童生徒等への日本語指導指導者養成研修」が行われました。日本語指導は、関係機関と連携しながら受け入れ体制を整備し、児童生徒の実態に応じて組織的・計画的に実施されることが求められています。

研修は、外国人児童生徒等の担当教員等への資質・能力が総合的に示された「モデルプログラム(公益社団法人日本語教育学会 文部科学省委託事業/文部科学省『外国人児童生徒等教育を担う教員の養成・研修モデルプログラム開発事業』)」に沿って進められました。3年ぶりの対面開催となった今年は、3日目に「日本語指導の方法と授業づくり」として、小学校、中学校、高等学校、初期適応支援教室の各コースに分かれ、三重県内の指導体制や教育実践の様子を現地視察する場が設けられました。視察後、参加された方の「自分の地域は体制が整っていない。どう進めたらいいか…」といったつぶやきを耳にしましたが、現状と課題を明確に捉えるための気づきに変え、さまざまな立場の参加者と講師の方々がともに、それぞれの現場や組織でどのような取組みを推進していくか検討を深める姿が印象的でした。

令和5年度からは高等学校等において日本語指導が制度化され、「特別の教育課程」として運用が始まる方針が示されています。就学前から高校、そしてその先の将来設計を見据え、連続する学びの視点からの日本語指導・教科指導を行うのはもちろんのこと、今後は校内、家庭、外部機関、地域社会との連携もよりいっそう必要になることが予想されます。

ここで、ある取り組みを紹介したいと思います。先月中旬、三重県で外国人高校生を対象としたインターンシップが行われました。地元企業での1~3日間の仕事体験と事前・事後に全体のオンラインセミナー各1回が設けられた本取組には、県内3つの高校から31名が参加しました。この事業は、行政、産業支援センター、国際交流協会、県内企業、教育委員会、高校、大学等を跨ぎ、実態把握を経て、多様な専門性を持つ人が連携し、実現したものです。背景には、地域の人と人との地道なつながりがありました。連携の萌芽は、高校の先生から国際交流協会に「将来のキャリアを考えることを通じ、日本語や教科学習を深められないか」という声が寄せられたことがきっかけでした。こうした声が関係各所で共有され、それが企画・実施に結びつきました。子どもの「居場所」を支える大人にも、協働する場所と仲間が必要です。最初の一歩は、地域の人とことばを交わすことから始まるのかもしれません。
事前セミナーでは、地元で働く元外国人生徒が先輩として、後輩に語りかける場面がありました。体験先の職場では、日本人や外国人社員の方々が緊張する高校生を温かく受け入れる場面がありました。参加した高校生からは「日本語だけでなく複数の言語を生かして人の役に立つ仕事がしたい」といった声を聞くことができました。

子どもたちもいつかは大人になり、将来の社会をつくっていく一員となります。外国人児童生徒等をとりまく課題は、これからの共生社会を築く上で重要な鍵といえます。