NITSニュース第201号 令和4年10月28日

主体的・対話的で深い学び

國學院大學 人間開発学部初等教育学科 教授 田村学

資質・能力を育成する「主体的・対話的で深い学び」

生きて働く「知識及び技能」、未知の状況にも対応できる「思考力、判断力、表現力等」、学びを人生や社会において生かそうとする「学びに向かう力、人間性等」を一人一人の子供に育成していくことが求められます。そのためにも、学習に主体的に取り組んだり、異なる多様な他者と関わり考えを広めたり、学んだことが様々な課題の解決に生かせるような深まりのある学習が大切になります。

「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善

授業の主役は教師ではなく、一人一人の子供です。子供が、持っている力を存分に発揮し、本気で取り組む授業を実現することが大切です。そうすることこそが、育成を目指す資質・能力の育成につながるからです。資質・能力の育成は、繰り返し、何度も何度も自分の持っている力を発揮し続けることが大切です。そうした積み重ねこそが資質・能力を確実に育てていきます。受身の暗記・再生型の授業を、自ら学び共に学ぶ思考・発信型の授業に変えていくことが求められるのです。

(1)主体的な学びを実現するイメージ

主体的な学びについては、授業の導入における「課題設定」「見通し」と、終末における「振り返り」を改善することが考えられます。
子供は、実生活や実社会とつながりのある具体的な活動や体験を行うことによって、意欲的で前向きな姿勢となります。まずは、リアリティのあるクオリティの高い課題設定が欠かせません。それらに加えて、学習活動の見通しが明らかになり、学習活動のゴールを鮮明に描くことも大切です。実際の学習活動を展開していく際には、見通しがあることで学びが連続し、知識や技能は結び付いていくはずです。
一方、振り返りは、自分の学びを意味付けたり、価値付けたりして自覚し、他者と共有していくことにつながります。振り返りには、学習内容の確認、学習内容の一般化、自己変容の自覚などの意味があります。そのためにも、文字言語によって表現する学習活動などを行うことが大切です。

(2)対話的な学びを実現するイメージ

対話的な学びについては、異なる多様な他者との「学び合い」を重視することが大切です。学習のプロセスを質的に高めていくとともに、他者と力を合わせて問題を解決することや力を合わせて新たなアイディアを生み出すことが求められているからです。
対話的な学びを実現し、相互作用によって子供の学びを豊かにするためには、子供がどのような知識や情報を持っているか、そうした知識や情報をどのように処理するか、どのような成果物を期待しているかなどが大切です。

(3)深い学びを実現するイメージ

深い学びについては、「学習のプロセス」を意識することが大切です。問題を解決するプロセス、解釈し考えを形成するプロセス、構想し創造するプロセスなど、教科固有のプロセスの更なる充実を目指しましょう。なぜなら、学習のプロセスにおいては、それまでに学んだことや各教科等で身に付けた知識や技能を発揮・活用する学習場面を頻繁に生み出すことができるからです。
深い学びの実現のためには、身に付けた知識や技能を活用したり、発揮したりして関連付けることが大切です。だからこそ、明確な課題意識をもった主体的な学びで知識や技能のつながりを生むことが必要です。また、情報としての知識や技能を対話によってつなぐ学びが重要です。あるいは、学習活動を振り返り、体験したことと収集した情報や既有の知識とを関連させ、自分の考えとして整理し意味付けたり、価値付けたり、共有したりすることも大切になります。