NITSニュース第96号 令和元年8月9日

インクルーシブ教育

FR教育臨床研究所 所長 花輪敏男

そもそもインクルージョン社会というものは、障害のある人もない人もお互いが生きやすい・住みやすい社会ということに他なりません。 単に障害がある人とない人が同じ地域で生活しているだけではインクルージョン社会とは言えないでしょう。 お互いが、認め合い協力し成長し合える社会でなくてはなりません。ケミストリーが起きている状態です。

子どもの社会である学校も、インクルージョン社会でなければなりません。 学校教育では、教育課程が違うことから、障害のある子どものための特別支援学級や特別支援学校があります。 しかし、教育課程が違っていても生活部分では可能な限り一緒であるべきです。 通常の学級に発達障害の子がいるということは、障害のある子どもとない子どもが同じ空間で生活を共にしているという状態です。 学校生活の中で、発達障害のある子が差別を受けたり、不利益を被ったりせず、充実した学校生活を送ることができるならば、まさにインクルーシブな学校であると言えるのでしょう。

特別支援教育の理念を再確認したいと思います。 特別支援教育は「一人一人の特別な教育的ニーズに応える教育」です。 教師のニーズではなく、あくまでも子どものニーズということです。 「集団に合わせる」という指導は、教師側のニーズに沿ったものです。 子どもが、障害ゆえに困惑している・できないでいるので、その子が分かるように・やり易いように、その子に合った特別な配慮(合理的配慮)を用意しましょうというのが、特別支援教育です。 つまり特別支援教育は、インクルーシブな学校を実現するための教育ともいえるものなのです。 まさに人権教育そのものともいえるでしょう。

さらに合理的配慮は、発達障害のある子だけではなく、ほかの子にとっても学習しやすくなる・生活しやすくなるということがあります。 ユニバーサルデザインの側面があるということです。 合理的配慮は、日常生活全般で保障されていることが大切です。 特別な技術を持った人が、限られた時間だけ特別な空間でなされるものではありません。 そして「関わりの主体」は教師であるべきです。 様々なところと連携を図らなければなりませんが、その際も「学校・教師の主体性」を大事にしなければならないと思います。

合理的配慮は生活面だけではなく、授業の中でも必要なものです。 そこで「徹底した授業研究」をお進めしています。 従来は、教材研究の視点で授業研が行われていましたが、これに特別支援教育の視点を加えてほしいということです。 これまでと全く違ったことをやることではなく、新たに「特別支援教育の視点」を加えるということです。 この視点を加えることによって、検討する・アイデアを出し合うということの広がりが期待できます。

特別支援教育については、行政的には急速に充実・発展をしてきたと思います。 つまりツールはいろいろ揃ってきた状態であると思います。今後は、それらがうまく機能することを考えていかねばなりません。 みなさんの具体的な実践を期待しています。