NITSニュース第90号 令和元年6月28日

外国人児童生徒等教育の新たな展開へ

目白大学人間学部児童教育学科 専任講師 近田由紀子

令和元年6月「外国人児童生徒等に対する日本語指導指導者養成研修」は、日本語指導が必要な児童生徒等の増加や制度改正等を踏まえ、これまでとは異なる企画で実施されました。
時を同じくして6月21日、参院本会議で「日本語教育の推進に関する法律」が成立するという大ニュースがありました。 この法律の基本的施策の一つに、「国は、外国人等である幼児、児童、生徒等に対する生活に必要な日本語及び教科の指導等の充実その他の日本語教育の充実を図るため、これらの指導等の充実を可能とする教員等の配置に係る制度の整備、教員等の養成及び研修の充実、就学の支援その他の必要な施策を講ずるものとすること。(第十二条第一項関係)」が示されました。
これから具体的にどのような施策が進められるのか目が離せませんが、確かなことは、外国人児童生徒等教育を担う学校や教師への期待がますます高まることです。

また、新学習指導要領総則にも、日本語に通じない児童生徒に関する記述が初めて記されました。 総則解説には、通常の学級での理解・表現・記憶・自律・情意に関する支援についても記されています。
例えば、「ゆっくりはっきり話す、児童の日本語による発話を促すなどの配慮、絵や図などの視覚的支援の活用、学習目的や流れが分かるワークシートの活用などの教材の工夫」などです。 これらはユニバーサルデザインの授業にも通じるものがあります。

このような新たな動きがある今こそ、全ての教職員に対して外国人児童生徒等の研修を充実させるチャンスといえるでしょう。 学校現場では「受入れの仕方や教材、指導方法が分からない」と言った声もよく聞きます。すでに公開されているツールは多々あるのですが、情報が伝わっていないことが課題です。
そこで、研修企画・実施にあたって、以下のウエブサイトを積極的に活用し、基本的な情報を共有することから始めることをお勧めします。

外国人児童生徒等との共生が日本の子供たちの成長につながるということをしっかり認識して活用・実践することをねらっています。 改訂版では、最新の統計データの反映、制度改正等のアップデート、最新の指導方法の提示、支援体制の構築に関する記載の充実、先進的な自治体の取組事例をコラムとして収載していることが特徴です。

外国人児童生徒等の学習を支援する情報検索サイトがリニューアルされました。 教材検索・文書検索・基本情報等へのリンク等が利用しやすくなりました。 またこの他に、多言語の学校関係用語を検索ができる用語検索や、多言語の予定表を作成できる予定表作成機能もあり便利です。使い方は極めて平易です。

このような外国人児童生徒等教育のための分かりやすいガイドやツールを活用した基本的な情報やノウハウの共有により、日本語指導担当教師のみでなく管理職や在籍学級担任等他の教職員の意識を高めることが重要です。 これらを足がかりとして、外国人児童生徒等教育が広く展開されることを願っています。