NITSニュース第88号 令和元年6月14日

学校マネジメントプランの設計

国立教育政策研究所 総括研究官 藤原文雄

「校長や副校長・教頭に加え,主幹教諭,指導教諭,事務職員等のミドルリーダーがそれぞれのリーダーシップを発揮できるような組織運営を促進する必要がある。」

平成31年(2019年)1月25日にとりまとめられた中央教育審議会『新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)』の中の一文です。 これは,校長のリーダーシップの発揮を前提としつつ,多様なミドルリーダーによるリーダーシップの発揮が学校成果の向上につながるという考え方に基づいています。学術的には,「分散型リーダーシップ」と言われるものです。

国立教育政策研究所が実施した調査においても,学力が上昇傾向にある学校では,学校事務職員を含め校長以外の多くの人たちがリーダーシップを発揮していることが明らかにされています(国立教育政策研究所『「次世代の学校」実現に向けた教育長・指導主事の資質・能力向上に関する調査研究報告書』2019年)。
リーダーには,「思い(Will)」が必要です。もちろん,思いを打ち出すだけで付いてきてくれるフォロア―が生まれるわけではありません。フォロア―を獲得するためには,コミュニケーションを重ねビジョンを共有し,相手をリスペクトしつつ協働するといった継続的な取組が不可欠です。 しかし,「思い(Will)」のないリーダーにフォロア―は生まれません。どんなに小さくても自分の「思い(Will)」を持ち,その実現に向け「やり抜く」よう努力することが子供を幸せにする道なのです。

2015(平成27)年12月にとりまとめられた中央教育審議会『チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)』を受け,2017(平成29)年3月に学校教育法(同年4月から施行)が改正され,学校事務職員の職務規定は「従事する」から「つかさどる」(学校教育法第37条)へと変更されました。 改正に際し,文部科学省が発出した通知(28文科初第1854号)は,改正の趣旨を学校事務職員が「より主体的・積極的に校務運営に参画することを目指すものである」と説明しています。文部科学省も,学校事務職員のリーダーシップの発揮に期待しています。

「学校マネジメントプランの設計」(演習)は,「こんな学校を創りたい」,「こんな学校事務職員になりたい」という「思い(Will)」を持ち,その実現に向け「やり抜く」スキルを高めることを目的としたものです。 AIやビッグデータ等の高度情報技術の進展に応じた教育革新をいかに実現していくことができるのか。人口減少・高齢化など地域課題の解決に向け,いかに「持続可能な社会教育システム」の構築を進めることができるのか。今日,「新時代の到来を見据えた次世代の教育の創造」(第3次教育振興基本計画(平成30年6月閣議決定))が求められています。

今回の研修が,中央研修参加者の皆さんにとって新時代の到来を見据えた「思い(Will)」と「やり抜く」スキルを持つ次世代の学校事務職員に近づく一歩になれば幸いです。さらに,中央研修参加者の皆さんが各地でリーダーシップを発揮され,次世代の学校事務職員が全国に溢れ,子供の幸せに一層貢献できるような日が来ることを楽しみにしています。