NITSニュース第87号 令和元年6月7日

カッコウの鳴き声響く学校づくり

神田外語大学 客員教授 嶋﨑政男

「教育相談のマネジメント」の研修では、カリキュラム・マネジメント、カウンセリング・マネジメント、コーディネート・マネジメント(3C)の重要性を確認しました。 カリキュラム・マネジメントは、新学習指導要領に示された三つの側面からその充実を図る必要があります。教育相談の考え方・手法を教科等横断的な視点で活用できるよう全体計画・年間計画を整備するとともに、その進捗状況の評価・改善を進め、人的・物的な体制の確保・改善を図ることが求められています。
このためには、これまで学校教育相談が培ってきた、授業や学級経営等に活かす教育相談のマインド(心)とスキル(技)を全教職員が共通理解し、実践を進めることが大切です。 いわゆるカウンセリング・マネジメントの推進です。

学校教育相談の充実に日々努められている先生方には、この二つのマネジメントを円滑に進めるため、コーディネート・マネジメントの推進役としての期待がかけられます。 校内の教育相談体制を整え、カウンセリングマインド(教育相談の基本姿勢を活かして児童生徒等と接しようとする心情)溢れる学校づくりの担い手としての大切な役割です。

半世紀以上も前(昭和40(1965)年)に発行された『生徒指導の手びき』(文部省)では、既に「教育相談を専門に担当する者(学校カウンセラー、相談教師)の必要性が言及され、「人間的な暖かみ、自己を受容し他人を受容する態度、こどもに対する愛情と信頼感」等の大切さが指摘されています。 コーディネート・マネジメントを円滑に進めるには、このような基本姿勢に加え、カウンセリング(相談)、アセスメント(見立て)、コラボレーション(協働)、コンサルテーション(助言)、コンプライアンス(法的思考)、アウトリーチ(訪問支援)の力が求められます。英訳した頭文字が「CACCCO」となるので、これを「カッコウ」と呼びたいと思います。

かつて、学校への教育相談の導入がさかんに奨励された頃、子どもたちは、教育相談の技法の修得に没頭した教師に相談しようとせず、日ごろから共に汗して遊んでくれる教師に悩みを打ち明けたエピソードが多々ありました。「閑古鳥 今日も騒がし 相談室」という戯言さえ流布したと言われます。 「カッコウ」の鳴き声が響く学校づくりには、専門的技法という大輪の花よりも野辺に咲きほこる多種雑多な雑草の方が役立つことがあります。

「こんなふうに考えてみない」「あれも使えそうだよ」。そんな声がかけられれば良いのではないでしょうか。 「授業中、必ず全員と視線を合わせようとしている」「『ありがとう』っていつも子どもに声をかけてるな」「一人ひとりに応じた丁寧なコメント、真似しなくては」。そんな声が同僚からあがるようなら立派なコーディネートが出来てる証左です。
先の書にはこうあります。「相談教師は実践家でなければならない」。