アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:鹿児島大学教育学部附属中学校
教科等:1年特別活動(平成29年5月)
単元名:一人一人が居心地のよい学級を創ろう

よりよい人間関係の形成を図る力を養いたい

  • 自分と結び付ける自分と結び付ける
  • 互いの考えを比較する互いの考えを比較する
  • 自分の思いや考えと結び付ける自分の思いや考えと結び付ける

実践の背景

  • 実践校は鹿児島大学教育学部の附属中学校として、時代の要請に応じた研究・実践に取り組み、毎年その成果を県内外の教職員に公開しています。
  • 「自らよりよい未来を創る生徒の育成」をテーマに掲げて研究・実践を行っており、本実践は、その5年目にあたります。
  • 学校全体で育成を図る資質・能力を「能動性」と「独自性」と定め、理論に裏打ちされた授業改善を行っています。

授業改善のアプローチ

  • 学級活動における「学びのプロセス(問題の発見・確認→解決方法の話合い→解決方法の決定→決めたことの実践→振り返り)」を確立しました。また、話合いをすることの目的を「違いや対立を大切にして、相手の立場で物事を考えられるようになること」として共通理解を図り、進め方(①目的・課題の確認②話合いの手順③役割分担④意見交換⑤まとめ)、座席形態、約束(①友達の意見は最後まで聞こう②自分の意見を進んで発表しよう③話合い活動で決まったことを実践しよう④将来社会に出てどのようなことに生かせるか常に考えよう)を決め、活動の充実を図りました。
  • 生徒自身が課題を発見できるように、グローバル化や少子高齢化の資料から課題をつくるなど、現代社会とつながりのある課題を設定するように心がけました。
  • 生徒の考える力や考えようとする態度を見取るために、ルーブリックによる評価を行いました。

単元づくりのポイント

目標

  • 問題解決の方法に自信をもち、解決方法を意欲的に追究し、相互理解しようとする態度を養う。
  • 問題解決の方法を多様に考え、相互理解に必要なものは何かを判断し、それを実践することができるようにする。
  • 人間関係の問題を解決するには、問題を明らかにし、多くの解決方法を考え、結果を予想し、最も良い方法を決定し、実行することが大切であることを理解することができるようにする。

展開

事前

1 学級活動①
・「人間関係に関するアンケート」に回答する。
・これからの自分たちの学級を想像し、学級のあるべき姿について確認する。

2 放課後・学級運営委員会
・アンケートを集計する。

3 学級活動②
・学級の目指すべき姿と現状とを比較する。

本時

     

4 学級活動③
・どのようにしたら友達の気持ちや考え方に気付いてコミュニケーションをとることができるか考える。

事後

     

5 随時
・本時の学びを実践させ、日記に振り返りを書く。
・活動の過程を振り返り、評価シートの記入をする。

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

ロールプレイや意見交換を通して友達の気持ちや考えを理解しながらコミュニケーションをとることができる。

授業場面より

  • ①私が並べた机を整えずに帰るなんて、謝ってほしい!

    私が並べた机を整えずに帰るなんて、謝ってほしい!画像

    「放課後、日直で教室掃除をしている女子生徒。その子が並べたばかりの机に思いがけずぶつかりながらも、整えず部活に行く男子生徒。」授業開始、教師はそのような動画を見せながら、「さぁ、みなさんがこの女子生徒だったら、この後どのような言動をとるか、今日はロールプレイで考えよう!」と言いました。さっそく女子生徒役と男子生徒役に分かれてロールプレイを行います。「せっかく私が並べた机、ちゃんと元にもどしてから部活に行って。」「え・・・あ・・・うん・・・」「それからちゃんと、謝ってほしい!」「あ、ご、ごめん・・・」次第に身振り手振りも入ります。ロールプレイを通して、女子生徒の気持ちに共感しながら言動を考えました。

  • ②友達と喧嘩中で机に気付かなかったんだね。
     

    友達と喧嘩中で机に気付かなかったんだね。画像

    「実はね、この動画には別バージョンがあるんだ。」そう言いながら、教師はもういちど動画を流しました。「はぁ・・・部活の友達と喧嘩しちゃって行きづらいな。でも部活、行かなきゃなぁ・・・」今度は男子生徒の気持ちが吹き込まれています。視聴後、女子生徒の言動を考え直しました。「そういえば、最初に見た映像も、なんとなく元気なさそうだったね。」「うん、この男の子、喧嘩していたんだね。私が以前喧嘩したときの気持ちを考えると、『謝ってほしい!』じゃなくて、『どうしたの?』って言ってほしいかな?」生徒は男子生徒の置かれた状況と自分の経験を結び付けながら、女子生徒の言動について考えていきます。男子生徒が机を整えずに帰った行動そのものではなく、その前提に何があったのかを考えることで、本質的な改善に向かう深い話合いが実現しました。

  • ③「謝ってほしい!」より「どうしたの?」かな・・・
    「仲直りした方がいいよ」の方がいいかな・・・

    「謝ってほしい!」より「どうしたの?」かな・・・「仲直りした方がいいよ」の方がいいかな・・・画像

    もう一度ロールプレイを行います。しかし今度はさっきと様子が違います。「なんでそんな暗い顔しているの?」「教室にずっと残っていたけど、どうかしたの?」そんな男子生徒を気遣うような言葉が教室中にあふれます。さらに教師はロールプレイを友人同士で鑑賞し合うように促しました。他班の「仲直りした方がいいよ。」という女子生徒役の台詞に「うん、『どうしたの?』よりアドバイスがあったほうが、男子生徒は安心できそうだね!」と発言しました。「相手の気持ちを考えた言動」について自分の班と他班の意見を比較しながら、より男子生徒を思いやった言動になるよう練り上げました。

  • ④相手意識をもつ言動って大切!
    日常生活にも生かしていきたいな。

    相手意識をもつ言動って大切!日常生活にも生かしていきたいな。画像

    最後に振り返りと、今後実生活に生かせることをまとめます。「今日の授業では、相手意識をもつことの大切さがわかった。目には見えないけど、友人関係をよくするために大切なことだ。」と振り返る生徒がいました。よりよい人間関係を形成しようとする意識が高まりました。また「朝のあいさつ運動をしている生徒がいます。今まで私は適当にあいさつしていたけど、私たちのために頑張ってくれていると思います。明日からはしっかりあいさつしようと思います。」と振り返る生徒もいました。日常の学校生活でも、相手意識をもって行動することの必要性に気付きました。最後に事後活動(本時の学びをこれからの生活に生かし、日記に振り返りを書く活動)の確認をしました。

報告者:研修協力員  宮迫