令和2年9月4日

NITSニュース141号 講師コラム「学校組織マネジメントの実践に向けて」

【今週の目次】

  1. 今週の一言
  2. オンライン講座「校内研修シリーズ」活用調査ご協力のお願い
  3. 講師コラム
  4. 「第4回NITS大賞」エントリー開始
  5. オンライン講座「校内研修シリーズ」のご紹介
  6. 研修プロデューサーより
  7. 編集後記

1. 今週の一言

9月に入り、ようやく暑さも一段落と思いきや、今日も関東はうだるような暑さとなりました。 季節の変わり目は寒暖差も激しくなりがちなので、くれぐれも体調にはご留意ください。

今週は、「学校組織マネジメント」に関するコラムを中心にお送りします。

2. オンライン講座「校内研修シリーズ」活用調査ご協力のお願い

全国の教職員の方々に、豊富で質の高い研修機会を提供するため、当機構では平成29年度より、オンライン講座「校内研修シリーズ」を制作しています。 この「校内研修シリーズ」の利用について、現状を把握し、内容の充実や改善につなげていくために、アンケート調査を実施することといたしました。 メールマガジン読者である皆様にも、ぜひ貴重なご意見をお伺いできますと幸いです。 下記URLよりアンケート画面(Googleフォーム)に移行できますので、ぜひとも調査へのご協力をお願いいたします。

3. 講師コラム「学校組織マネジメントの実践に向けて」

兵庫教育大学大学院 教授 浅野良一

今回のメールマガジンでは、学校の改善・改革の参考になる組織活性化のキーワードを紹介します。

1 理論と実践の往還

一般的に理論は、「①複雑な現実の世界を単純化することが可能である、②得られた知識を蓄積する上で有効な思考上の枠組みとなる、③感覚的な結論を回避して論理的な説明を行うことが可能である、④初心者にとっても理論が確立されていれば学習しやすい等の利点を持っている」などの特徴があるとされています。

理論は実践のための基盤となるものですが、理論だけでは、実践につながりにくいようです。 そこで、理論と実践の往還による「定石」を知ることが必要になります。 学校組織マネジメント指導者養成研修は、この「定石」を学習する機会でないかと思います。

2 組織活性化の「定石」のキーワード

(1) 安定の不安定

NECの元小林社長の言葉で、「一見安定している組織は革新が起こりにくく、ぬるま湯状態に安住している間に、ビジネスチャンスを失ったり、業績の悪化を招いたりすることがある」というものがあります。 いわゆる「温泉学校」は、学校の改善・改革が進みにくいことを示しています。

この状態を脱するために、各種の組織変革理論では、組織内部の危機感の醸成をあげており、そのきっかけは「外部からのプレッシャー」「外の風」だと指摘しています。

つまり、学校評価や全国学力・学習状況調査の結果、地域や保護者などからの声、高校では、募集定員の推移などを外の風として、学校内に不安定状態を意図的に作り出すことが必要なのです。

(2) ミドルリーダーが起爆剤

しかし、危機感の醸成だけでは、一気に組織改善・改革につながりません。 日本の組織変革理論は、その実現の第一歩が「ミドルの小集団による戦略的突出」だとしています。

それは、学校のミドルリーダーが音頭を取って、学年や教科・分掌、あるいは若手教職員集団といったチームで、学校の重点事項を実現する徹底した取り組みを行うことです。 また、その活動による「目で見える成果や変化」が、校内の他の小集団に影響し、その結果、学校の他の教職員全体が巻き込まれて変化します。

これは、集団力学では、「少数のイノベーターが、一貫した態度と行動を保持することで、多数者側が影響を受け、態度を変容する」こととされ、マイノリティ・インフルエンスと呼ばれています。

(3) 燃えるものから燃やす

誰が改善・改革の起爆剤となるミドルリーダーとしてふさわしいのでしょうか。 学校改善・改革に成功した校長先生からお話を聞くと、「ベテランではなく若手を中心として『燃えるものから燃やす』」のだといいます。 そして「ベテランを類焼させる」ことで、全体の変化につなげるのです。

(4) クォーター・マネジメント

改善・改革のきっかけは少人数でも、そのうち賛同者が増え、いつのまにかマイノリティからメジャーになります。 経験的に、3対4対3(サシミ)とか、2対6対2(パレートの法則)と言われています。 また、三菱総合研究所「クォーター・マネジメント(講談社)」によると、25%の人が動きを変えると全体が変わるとしています。

このように、学校を改善・改革するには、ミドルリーダー(若手のキーパーソン)を中心としたいわゆる「ミドル・アップ・ダウンマネジメント」が有効なのではないでしょうか。

4. 「第4回NITS大賞」エントリー開始

「NITS大賞」は、教職員支援機構(NITS・ニッツ)が、学校をとりまく課題の解決に向けてチーム学校で実践した取り組みを広く募集し、表彰・公開することにより、教育の現場に優れた取り組みを普及していく事業です。 第4回となる今年度は、個人の実践活動ではなく、「チーム学校」を具現化し、学校全体で計画的、組織的に取り組んだ実践活動を募集しています。 また、応募部門の設定もなく、実践活動の内容が幅広くなりました。

9月1日(火曜日)からエントリーが始まっており、すでに多数の応募が届いています。 エントリーは11月10日(火曜日)まで受け付けておりますので、ぜひ皆様からのたくさんのご応募をお待ちしております。

5. オンライン講座「校内研修シリーズ」のご紹介

ご好評いただいている「校内研修シリーズ」。今週は「組織マネジメント」に関する動画をご紹介します。(所属名等は撮影時のものです)

6. 研修プロデューサーより「求められる道徳教育の在り方」

独立行政法人教職員支援機構つくば中央研修センター 研修プロデュース室 特別研修員 和田庄平

小学校では平成30年度から、中学校では令和元年度から「特別の教科 道徳」が全面実施されました。 今までと何が変わり、何が求められているのか。 先生方も手探りの中で、現状における最善の実践をされていることと思います。

「NITSオンライン研修 教職大学院向け集中講座『道徳教育』」(※受講者を限定した配信)では、道徳教育について高い専門性と識見を備えた講師陣による講義を配信します。 「道徳教育に関する政策動向」(文部科学省 石田有記講師)から始まり、「求められる道徳教育の充実について」(文部科学省 浅見哲也講師)を通して、学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育の理念や考え方について理解を深めていきます。 道徳教育の実践事例では、高松市の小学校と伊豆の国市の中学校での学校全体での取組について紹介します。

後半では、「『特別の教科 道徳』の指導と評価について」(文部科学省 浅見哲也講師)と題して、道徳の授業を取り上げ、「指導」と「評価」の観点から解説します。 畿央大学の島恒生講師には、演習への展開を想定した講義をしていただきます。 2つの視点「学びをつくるためには」と「問いをつくるためには」において、教材を活用した講義は、“考え、議論する道徳”についての理解を深めることができます。

今回の改訂では、道徳科の量的確保や質的転換などが求められています。 教科化によって授業における評価が求められるなど、変更が加えられた部分もあります。 しかし、道徳教育は全教育活動を通じて行うことなど、変わらない部分もあります。 教師一人一人が、改訂に至った背景やねらいを理解し、道徳科の本質に改めて触れ、評価の意義や方法について熟慮することが求められています。

また、道徳科に限ったことではないですが、変化を迎える時期には、学校全体として組織的に取り組むことも大切です。 例えば、「育てたい子供像」は全教職員が共有し、それを常に意識しながら教育活動が行われているのか、などは基本的な事項だと思われます。 今回は一方向のオンライン研修にはなりますが、リフレクション(振り返り)の時間を有効に活用いただけるようなプログラム編成とさせていただきました。

今回、このオンライン研修の構成を検討し、講義動画の収録や編集に関わる機会を得ました。 できあがったものを視聴し、自分なりにリフレクションに取り組むことで、自分自身の教員生活を再考する充実した時間となりました。

7. 編集後記

「学校組織マネジメント」の考え方は、学校に限らず、様々な組織に当てはまることだと思います。

自分は属する組織においてどんな役割を果たすことができるのか――

自分の役割だけを考えるのではなく、全体の中でどう位置付けられ、周りにどんな影響を与えられるのか、という俯瞰的な視点を、常に忘れずにいたいと思います。

来週は、「財務マネジメント」に関するコラムを中心にお送りします。