NITSニュース第109号 令和元年11月8日

人生100年時代の元気な学校をつくる

別府大学 教授 佐藤敬子

「人生100年時代」と言われる今、少子高齢化、AI (人工知能)の発達により社会は大きな転換点を迎えています。 10年後、20年後には姿を消してしまうであろう物・仕事・サービスも多くあるでしょう。 たとえば事務職や受付、レジ係、運転なども機械化されつつありますし学校においてもただ知識や情報を伝えるだけの教員は必要とされなくなると言われています。

また教育現場でもひと昔前まではここまで普及するとは想像していなかったプログラミング教育の導入やICTの活用、電子黒板やタブレット端末など様々なものが授業を効果的に、便利にしてくれます。 そのような中、次代を生きる子どもたちを育てるために必要とされる教師の能力とはどのようなものでしょう。

AIやコンピュータは答えのある問いに対して、人間よりも早く正確に導き出すことができますし、データを蓄積して学習することによっておおよそのことはできます。 しかし、人間は答えが一つではない問いに対して思考を巡らせ周囲とのやりとりを通して解決策をあみだすことができます。 またゼロからものを創る力や感性、好奇心、センス、価値観、やる気(モチベーション)などは機械には代わることのできない人間の能力です。これらの能力を磨くキーワードが『コミュニケーション能力』だと考えます。

コーチングは相手の優れた能力を引き出し自発的な行動を促すためのコミュニケーション・スキルです。

私は大学で教職課程を担当するとともに全学生の就職を支援するキャリア支援センターで日々学生と向き合っています。 ここ数年、企業は人手不足で相変わらずの売り手市場。選ばなければどこかには就職できる時代です。 だからこそ、どこに就職するか何になるか、ではなく「自分はどういう生き方(働き方)をしたいか」を主体的に考え実現に向けて努力して欲しいと思い授業をしています。

コーチングで磨くことができる能力は
①相手の気持ちをわかろうとする力(きく力)…児童生徒理解
②自分をわかってもらおうとする力(伝える力)…プレゼン能力、わかる授業
③共に解決策をあみだそうとする力(質問力)…問題解決能力・協調性

コミュニケーションの基本は日々のささやかなやりとりの繰り返しです。 これを私は「人間関係のコーティング(コーチングではありません)」と呼んでいます。 多忙な日常でも一人一人に声をかけ変化や行動、姿勢に気づき、それを相手に伝えてこそ相手が「この先生に聞いてほしい」と思える存在となり得ます。

またコーチングでは「答えは必ずその人の中にある」という考え方をします。 ただ、その答えは他者から指摘されるものではなく自ら気づくもの。そのために有効なのが「効果的な質問」です。 自分が自分に問いかけ問題解決の手立てを見つけるための上手な質問を投げかけることのできる上司は主体的な行動をとれる部下を育てます。

ともあれ、毎回この中央研修に参加される選ばれし全国の管理職等の先生方は日常の激務と様々な案件に向き合いながらも皆さんが実に明るく前向きでエネルギッシュであると感じます。 演習の端々に見られる先生方の笑顔と実践力と未来志向は「元気な学校をつくる」かけがえのない原動力となっているのだと確信します。